『べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～』第30回　「人まね歌麿」から始まる新しい道（感想）（ネタバレがあります）

ドラマ感想

2025.08.13

第30回は、喜多川歌麿（染谷将太さん）が“人まね歌麿”の殻を破って、自分だけの絵と向き合う回。ずっと迷いながらも、最後には新しい場所へ進む姿が切なくも希望に満ちてて、見終わったあと胸の奥がじんわりした。

蔦重が見た「時がきた」瞬間

蔦屋重三郎（横浜流星さん）は、狂歌絵本の話をしていた北尾重政（橋本淳さん）から「もっと“歌”を売り出せば？」と言われる。“歌”とは歌麿のこと。他の絵師そっくりに描ける才能で有名になっていた歌麿を見て、蔦重はついに「今がその時」と感じる。重政の絵と歌麿の模写を並べてみせた後、「お前ならではの絵をぶつける時だ」と促す蔦重の声に、期待と試練が混ざっていた。

枕絵という挑戦と苦しみ

蔦重から提案されたのは、まさかの枕絵。名のある絵師が密かに腕を競った分野だと聞かされ、歌麿は戸惑いながらも「やる」と答える。でも筆を取るたび、母（向里祐香さん）やヤス（高木勝也さん）の幻影に襲われて、心も体も消耗していく。部屋にこもり、食事も取らず、暴力沙汰まで起こすほど追い詰められる姿が痛々しくて、見ていて胸が詰まった。

“三つ目”との再会

そんな歌麿の前に現れたのが、鳥山石燕（片岡鶴太郎さん）。幼い頃に出会い、その才能を見抜いてくれた絵師だ。「お前の絵には妖が閉じ込められておる」と言い、「見える者が描かなきゃ消えてしまう」と語る鳥山の言葉は、まるで心の奥を灯す火みたいだった。この再会が、歌麿に「俺の絵を描きたい」という本音を引き出す。