嵐の夜、レトロマンション「たそがれステイツ」に人が集まるだけの一晩。
でも、その時間が人生の節目みたいに温かくて苦くて泣けた。
小倉渉(北村有起哉さん)の無邪気さと、あん(仲間由紀恵さん)の静かな諦めが交差する瞬間、呼吸するのを忘れた。
台風よりも強い“家族の風”が吹いた第1話。
笑ってるのに、心の奥がちょっと痛い。
「たそがれステイツ」って名前からして切ないのに優しい
舞台は、東京郊外の三階建てマンション「たそがれステイツ」。
1階にはシニア夫婦の慎一(草刈正雄さん)とさとこ(阿川佐和子さん)。
2階には女性カップルの奈央(小野花梨さん)と志保(石井杏奈さん)。
3階には渉(北村有起哉さん)とあん(仲間由紀恵さん)、そして娘のゆず(近藤華さん)。
暮らしの形は違うのに、みんな“誰かと生きる難しさ”を抱えてる。
古い建物の中に流れる空気が、まるで人の記憶みたいで優しい。
岡田惠和さん脚本らしい、静かで深いセリフが心に残った。
台風の夜、他人と過ごす“家族のような時間”
川の氾濫に備えて、水嚢を積む慎一と渉。
災害の緊張感よりも、“誰かと一緒にいたい”気持ちが勝つ瞬間が素敵だった。
渉の提案で、住人たちが小倉家に集まり、急遽“避難ホームパーティー”が始まる。
初対面の奈央と志保がぎこちなくチャイムを押す姿、なんか胸にじんわりきた。
食卓に座るみんなの距離が、時間とともに少しずつ縮まっていく感じがリアル。
料理と笑い声の中で、誰もが“ひとりじゃない”ことを思い出してた。
渉(北村有起哉さん)の“鈍感な優しさ”がリアルすぎてつらい
食品会社勤めの渉は、家族思いで良い人。
でも、その“良い人”が無神経のギリギリに立ってる。
台風の夜、楽しそうにみんなをまとめる渉の姿、悪気ゼロなのにちょっと痛い。
翌朝の「子どもが二十歳になったら離婚するなんて言ってたな~」って笑いながら言うセリフ。
あれ、本人は軽い冗談のつもりなのに、聞いてる側には地雷級。
北村有起哉さんの“空気の読めなさを演じるうまさ”が光ってた。
わざとじゃないのに傷つける人間のリアル、完璧に表現してた。
あん(仲間由紀恵さん)の沈黙に詰まってた20年分の想い
「生きてるんだけど、あの約束。そのつもりでずっと生きてきたんだけど」
あん(仲間由紀恵さん)の告白、静かな声なのに破壊力すごすぎた。
渉の“軽口”を、ずっと真に受けて生きてきた20年。
その年月が、言葉の重みとしてズシンと落ちてくる。
仲間由紀恵さんの演技、涙を見せないのに心が震える。
台詞よりも“呼吸”で感情を伝えるタイプ。
妻として、母として、ひとりの人間としての線引きが見えて切なかった。
隣人たちの存在が、やさしく響く背景音みたいだった
奈央(小野花梨さん)と志保(石井杏奈さん)の関係が、すごく温かい。
家具のない部屋にテントで寝てる二人の姿が、自由で軽やか。
1階の慎一(草刈正雄さん)とさとこ(阿川佐和子さん)も、夫婦の形を模索中。
それぞれが“他人の幸せ”を見つめながら、自分を投影している。
だからこそ、このマンション全体がひとつの家族みたいに見えた。
嵐の夜に生まれたつながりが、次の朝には希望になってた。
まとめ
第1話は、“平穏の中にある感情の地雷”を丁寧に描いた傑作だった。
渉(北村有起哉さん)の鈍感な優しさと、あん(仲間由紀恵さん)の静かな決意。
嵐の夜に交わされた言葉が、まるで人生の転機みたいに響いた。
「たそがれステイツ」という名前のように、終わりと始まりのあいだに立つ人たちの物語。
あんの言葉が何を変えていくのか、次回が怖くも楽しみ。
台風の音よりも、心のざわめきがずっと長く残った。
(ゆめのん)