『ばけばけ』第10話/“トキの出生の真相”が明かされ、静かな衝撃が走る(感想)(ネタバレがあります)

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第10話、朝の時間なのに心臓がぎゅっと掴まれた。
トキ(高石あかりさん)がどこから来たのか――。
ずっと漂っていた違和感と温もりの理由が、ようやく繋がった。
画面の空気まで静まり返るような、美しい真実の描かれ方だった。

「ばけばけ」は“愛の継承”の物語だった

明治の松江。
没落士族の娘・セツと、異国の夫ハーンをモデルに描かれるこの物語は、“時代の境界に生きる人々”を優しくすくい上げていく。
主人公・松野トキ(高石あかりさん)は、怪談を愛する朗らかな女性。
けれどその明るさの裏には、何かを包み隠すような影があった。
その影の正体が、今回の第10話で静かに姿を現した。

祝言前夜に交わされた“家族の記憶”

山根銀二郎(寛一郎さん)との祝言を翌日に控え、松野家は穏やかな幸福に包まれていた。
父・司之介(岡部たかしさん)が「おトキが初めてうちに来た日に食べたのう」と語り、母・フミ(池脇千鶴さん)も「あの子、なんもかんもかわいくて」と微笑む。
この何気ない食卓の会話が、突然過去の扉を開いた。
画面がやわらかく光に包まれ、18年前の記憶へと切り替わる瞬間の演出が見事。
このドラマの“幽かな気配”の描き方は本当に上品だ。

赤ん坊のトキを託す、傳とタエの涙

回想の中で、雨清水傳(堤真一さん)が赤ん坊のトキを抱き、司之介にそっと託す。
後ろには傳の妻・タエ(北川景子さん)。
彼女の表情――泣くでもなく、ただ唇を噛んで見つめる姿が胸に刺さった。
何も語らないのに、すべてを語っていた。
子を手放すという決断の痛みと、愛を他人に託す勇気。
この短い数十秒の場面に、堤さんと北川さんの圧倒的な演技力が詰まっていた。
声を出さない分だけ、涙が静かに滲んでいく。

“血のつながり”と“育ての愛”の狭間で

視聴者の間で囁かれていた「トキは養子では?」という予感が、ついに真実となった。
けれど、それは悲劇ではなく、“愛の継承”として描かれているのが素晴らしい。
松野家にとってトキは“授かった命”であり、雨清水家にとっては“託した希望”。
どちらも愛していた。
だからこそ、司之介とフミの「嬉しかった」という言葉に、涙があふれた。
高石あかりさんが演じるトキの無垢な笑顔が、この真実をより切なく照らしていた。

トキはこの秘密を知るのか――

SNSでは「やっぱり本当の両親は傳とタエだったのか」「切ない」「すべてが繋がった」と反響が爆発。
多くの人がこの“静かな衝撃”に涙した。
ただ、この物語はまだ序章。
トキが自分の出生を知ったとき、何を感じるのか。
彼女の“優しさ”が壊れてしまわないことを祈りたくなる。
「ばけばけ」というタイトルが、“化ける”ではなく、“変わっていく”人間の姿を描いている気がしてきた。

まとめ

第10話は、朝ドラらしからぬ深さで「家族とは何か」を問いかける傑作回だった。
堤真一さんと北川景子さんのわずかな仕草に、愛と後悔と祈りが宿る。
そして、松野家がそれを“抱きしめるように”受け入れているのが優しかった。
高石あかりさんの柔らかい存在感が、この真実を痛みではなく希望に変えていた。
静かな回なのに、胸の奥でずっと鳴り続けるような余韻。
“怪談”ではなく、“家族の奇跡”の物語。
(ちーず姫)