『絶対零度〜情報犯罪緊急捜査〜』第2話、“愛か欺瞞か”が交錯するSNSの罠(感想)(ネタバレがあります)

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第2話は、シリーズらしい緊迫感の中に、人間の孤独と欲望を丁寧に描いた回だった。
SNS型ロマンス詐欺――よくある題材と思いきや、最後の「咲希(桜井玲香さん)はすべて気づいていた」の一言で、物語が一気に裏返る。
二宮奈美(沢口靖子さん)の静かな洞察と、咲希の壊れた愛の形。
“情報”と“感情”の狭間に潜む怖さが、これほどリアルに描かれたのは見事だった。

ベテラン刑事・二宮奈美、冷静と情熱のあいだで

沢口靖子さん演じる二宮奈美は、明るく元気で、時におちゃめな刑事。
でもその裏には、人の心の奥を見抜く冷静さと、真実を求める強い情がある。
今回のロマンス詐欺事件では、ただの金銭トラブルではなく、“愛の盲信”という人間の弱点に切り込む。
彼女が咲希の微妙な表情の変化に違和感を覚える場面、さすが「情報犯罪のプロ」と唸らされた。
それは“データではなく人間を見る”彼女の信条を象徴していた。

“悪意”ではなく“渇望”――橋本咲希という悲しい被害者

スーパーの店員・咲希(桜井玲香さん)は、SNSで出会った“恋人”に自分の口座を貸し、暗号資産まで送っていた。
いわば“騙された側”の典型例――と思いきや、真実は違った。
彼女は最初から、恋人“パク・デヒョン”の正体が藤井遥香(菜葉菜さん)だと知っていた。
それでもやり取りを続けていたのは、孤独を埋めたかったから。
「偽物じゃない!」と叫ぶ咲希のセリフは、愛の錯覚にすがる人間の痛みを代弁していた。
桜井玲香さんの演技が、穏やかさから狂気へと変わっていく過程を丁寧に描ききっていて圧巻。
SNSでは「桜井玲香の演技が鳥肌」「狂気の中に哀しさがある」と絶賛の声が多数上がった。

藤井遥香(菜葉菜)との対峙、“罪”と“赦し”の狭間

藤井が自ら出頭し、偽の恋人であったことを告白する場面。
普通ならここで“加害者と被害者”の構図になるはずが、そうならないのがこの回の妙。
藤井もまた、“誰かに必要とされたかった”という弱さを抱えていた。
「なんの意味があるの? 偽物だと分かっていて」と問う藤井に対し、
咲希が「偽物じゃない!」と叫んで机を叩く瞬間――このドラマは単なる犯罪ものを超えた。
“嘘でもいい、つながりたかった”という痛切な心情が胸を締めつける。

「情報犯罪」という現代の鏡

DICT(情報犯罪特命対策室)が扱うのは、姿の見えない敵。
データの流れを追いながら、そこに潜む“人の心”を暴いていく。
奈美の言葉にもあったように、被害者もまた“情報の一部”として利用されている。
恋愛、承認欲求、孤独。
SNSの世界で誰もが抱える危うさを、1時間の中でしっかりと見せた構成は秀逸だった。
佐生(安田顕さん)の「これは国家レベルの犯罪だ」というセリフも、現代社会のリアルを突いていた。

沢口靖子×桜井玲香、静と動の見事な対比

沢口さんの“冷静な優しさ”と、桜井さんの“壊れていく情熱”。
この対比が、第2話を圧倒的に印象深くしている。
奈美が最後に咲希へ「本当に幸せだったの?」と問いかけた瞬間、
咲希が崩れ落ちるように泣く――その静かな余韻が画面に残った。
誰かに嘘をつくのではなく、自分に嘘をついて生きてきた人の涙。
そこに「絶対零度」シリーズが貫いてきた“人間ドラマ”の核がある。

まとめ

第2話は、「愛」と「欺瞞」をSNSという鏡に映し出した傑作回。
桜井玲香さんの怪演、沢口靖子さんの包容力ある芝居、そしてシリーズならではの社会性が完璧に融合していた。
“情報犯罪”というテーマの中で、最も危険なのは「孤独」かもしれない。
奈美の「本当に幸せだったの?」という問いは、視聴者にも向けられているようだった。
次回も、“見えない敵”の裏に潜む“人間の真実”を見逃したくない。
(ゆめのん)

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