終幕のロンド ―もう二度と、会えないあなたに― 第3話 感想文(ネタバレあります)― “父と息子”“母と娘”、そして秘められた過去が交錯する夜

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いつもと違う朝、そして静かに揺れる家族の絆

第3話を観て、とくに胸に残ったのは、朝、草彅剛演じる鳥飼 樹が、息子・ 陸(永瀬矢紘)に登校か通院かを委ねるシーンの静けさです。浮かない表情で腹痛を訴える陸を、たった一言、「学校に行く?」と問いかける樹。小さな背中に高まる親心と、「父としてどうするべきか」という揺れが、何気ない日常の中で静かに描かれていました。

良かったこと

日常の隙間に潜む“不安”の描出

・いじめという“誰もが想像するけれど見えない場面”に、真琴(中村ゆり)が出くわす。陸が「自分だけ嫌なことをされる」と涙を見せるシーンが、とてもリアルでした。
・母・こはる(風吹ジュン)の生前整理に対して、真琴が抱く違和感。樹が「もう一度2人で話そう」と促すが、こはるが「娘の負担になりたくない」と拒む場面。家族間の“言えない何か”が、じわりと広がっていくのが丁寧でした。

過去と現在が交錯する構図の巧みさ

・また、磯部(中村雅俊)のもとに、10年前に息子を自殺で亡くした過去をめぐって波多野(古川雄大)が再び訪ねるという展開にもぞっとしました。過去の痛みが“今”の物語と静かにリンクしています。
・このドラマが“遺品整理”というテーマを軸にしながら、家庭内のミクロな物語(親子・夫婦・母娘)と、社会的な大きなテーマ(死・遺されたモノ・告白)を同時に動かしている点にも惹かれました。

気になった・もう少し掘ってほしかった点

父親・樹の距離感についての疑問

・日常シーンの中で、父として陸に寄り添おうとする樹の姿は良かったのですが、一方で「いじめ」「腹痛」「心配」など“父が介入すべき場面”に対して、もう少し積極的なアクションがあっても良かったのでは、という思いが残りました。
・ドラマのテーマが“遺品整理を通して人の最期と向き合う”という大きなものだからこそ、日常の“家族の中”の対話や葛藤がもう少し深まると、より厚みが出たかもしれません。

真琴のアドバイスが波紋を呼ぶ展開の描き方

・真琴が陸にあるアドバイスをするシーンは、結果として“後に問題を引き起こすことに”と紹介されています。 ただ、その“アドバイスの具体性”や“なぜそれが問題になるのか”という説明がまだやや不足しており、視聴者としては“これからどうなるのか”の危機感をもう少し強く感じたかったという気持ちもあります。

感想まとめ

第3話では、“家庭”という小さな世界の中で起きている“変化/ずれ”が、ゆっくりと浮かび上がってきた印象です。
– 父親として、遺品整理という仕事として“人の終わり”を見つめてきた樹が、息子の日常という“始まり”に直面し、その間に揺れる。
– 母/娘という関係における“秘密”と“言えない想い”。
– 過去を抱える大人たちが、現在の出来事にどれだけ引きずられているか。

とくに、遺品整理という“終わり”を扱うドラマでありながら、今回は“いじめ”や“親子のやりとり”といった“始まり”や“日常”にメスを入れてきた点が印象的でした。心温まる側面だけでなく、どこか胸にざわつきを残す回だったと思います。

今後への期待と考察

これから注目したいのは、
– こはるの「娘の負担になりたくない」という強い拒絶が、何を隠し、何を守ろうとしているのか。
– いじめを受ける陸が、父・樹、母・真琴、そして自分自身にどのように立ち向かうのか。
– 磯部が抱える過去、波多野が揺さぶろうとしている事情、その背景にある“御厨ホールディングス”との関係。

という点です。遺品整理という仕事を通して“往く人”と“残る人”を描いてきたこのドラマが、次回以降、“残る人”に焦点をあてて、より深く“終わらない想い”に切り込んでいくように感じました。第3話は、その入口に立たされた回だったと思います。
(あいちゃん)

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