べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜 第42回 感想文(ネタバレがあります)― 「転機の揺らぎと新たな責任」

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栄華の影に差す揺らぎ

第42回では、主人公・横浜流星演じる蔦重が、染谷将太演じる歌麿の“大首絵”ヒットで立て直したのち、新たな局面に入っていく様子が鮮やかに描かれていました。年明けに「身上半減」からの再起というドラマチックな背景が提示されることで、栄華を極めつつもその裏には不安や責任の重さがあることが伝わってきました。

良かったこと

ヒットの裏にある店の覚悟

蔦重が書物問屋を始め、看板娘をテーマにした錦絵が大評判となり、江戸の町が活気を帯びる描写がとても生き生きとしていました。遊びから商売への転換、そして文化の顔としての「看板娘」というモチーフが江戸の商人・町人文化を巧みに象徴していて、歴史ドラマとしての説得力を感じました。

新たな人生の始まり・私的変化

てい(橋本愛)が「子ができた」と蔦重に告げる場面は、華やかな成功物語の傍らに「家庭」や「次代」を担う覚悟が加わる瞬間として、物語に深みを添えていました。蔦重の仕事‐商売‐成功という線だけでなく、私生活における責任と変化が同時進行しているのが印象的です。

気になった・もう少し欲しかった部分

幕閣内の動きの描写の薄さ

一方で、定信(井上祐貴)が「オロシャ問題」や「朝廷の尊号一件」によって幕閣内で孤立し始めているという動きについては、少々説明不足と感じました。蔦重サイドの商文化・町人世界の盛り上がりが鮮やかな分、幕府や政治という大きな枠組みの中での“危機感”・“波紋”が、もう少し丁寧に描写されていれば、物語全体の重みがさらに増したと思います。

成功と変化の描き分けのバランス

看板娘が話題になり町が賑わう描写は活気があって良いのですが、同時に「成功=安心・安定」ではないという蔦重の内面の揺れや葛藤がもう少し掘り下げられていれば、観る側として「再起後の転機」がより感情に響いたのでは、と感じました。

感想まとめ

第42回では、蔦重という人物が「商いと文化」「個人と家庭」「成功と責任」という複数の軸で転機を迎えている姿が、多角的に描かれていました。町人文化を盛り上げる“前衛的な商人”としての蔦重と、家庭を持つ一人の男としての蔦重の姿のギャップが、物語の魅力をより強くしています。
一方で、町の祝祭ムードや成功の描写が明るく鮮やかなだけに、裏側にある“危機”や“揺らぎ”がもう少し突き刺さるような演出があれば、さらに印象深かったでしょう。

今後への期待と考察

これから注目したいのは、ていとの“新しい命”が、蔦重の商売・文化活動にどう影響を与えていくかという点。成功の先に待つ「次世代」「継承」「責任」が、町の繁栄とどのように結びつくのか。さらに、幕閣内の定信の動きが蔦重やその周辺にどのような波紋をもたらすのかも、興味が尽きません。
このドラマは、ただの成功物語でも歴史の物語でもなく、「変化を受け入れながらいかに立ち向かうか」を描いた群像劇でもあると改めて感じました。第42回は、その序章とも言える大きな“転換点”だったと感じます。
(あいちゃん)

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