静かな異変と深まる疑問
第3話を観てまず感じたのは、「能力が増えるほど、日常の“ちょっと”が壊れていく」という緊張感です。主人公・文太(大泉洋)は“ちょっとだけ心の声が聞こえる”エスパーになり、能力維持のためにEカプセルを登社先の社長・兆(岡田将生)から受け取るために動き始めます。
同時に、桜介(ディーン・フジオカ)に実は息子がいるという衝撃の事実が明らかになり、円寂(高畑淳子)や半蔵(宇野祥平)が抱える秘密も垣間見え、物語が一気に“裏”の階層へと降りていく回でした。
一方で、文太を“本当の夫”だと思い込んでいる四季(宮﨑あおい)との仮初めの生活が少しずつ“生活”に近づいていく様子も描かれ、「何から何まで設定なのか現実なのか」が揺らぎ始めているのが興味深かったです。
良かったこと
能力と“秘密”がリンクする構図の巧みさ
文太の“心の声が聞こえる”という能力が、単なるコメディや日常ドラマの装置に終わらず、「何かを見抜く」「何かを暴く」ための鍵として使われ始めたのが良かったです。桜介の息子、半蔵の過去、円寂の態度――それぞれの“隠したい何か”が、文太の能力によって“音”として、声なき声として視聴者にも届く。その感覚がゾクゾクする瞬間になっていました。
また、四季の「夫だと思っている」という設定と、文太がそこに戸惑いながらも少しずつ馴染んでいく様子も、緩やかな(しかし確実な)“変化”を丁寧に描いていたと思います。
仮初めの夫婦生活と能力者の日常というギャップ
“仮初めの夫婦”という設定の中で、文太が少しずつ生活に慣れていくけれども「ヒーローの恋はアイドル以上にあってはならない」というルールに引っ張られるという構図が、日常と非日常のギャップを強く感じさせました。能力を手に入れたとはいえ、普通の生活をしていたあの文太が、普通の“夫婦”を演じる(?)という状況に放り込まれることで、視聴者も「この世界、どこまでが現実?」と疑問を抱え続けることになります。
気になった・もう少し欲しかった部分
能力の制限とリスクの説明がやや曖昧
“ちょっとだけ”という能力の言葉通り、その制限が重さ・危険さを増していくのですが、第3話時点ではその“ちょっと”がどこまでなのか、逆にどこからが“多め”なのかがまだ曖昧に感じられました。能力によって起こる影響やリスクの説明がもう少し明確だと、文太がなぜ躊躇し、なぜ選択を迫られるのかがより深く響いたと思います。
ミッションと人物関係の繋がりにもうひとつ強い線を
物語は徐々に“秘密”と“能力”“会社”“仮初めの夫婦”という複数の線を走らせていますが、第3話ではややそれらが「並列」的に提示された印象があります。たとえば「桜介に息子がいる」という事実と「爆発のミッション(神社のお祭りで人が死ぬのを止める)」のリンクが、視聴者としてもう一歩「だから?」という納得に至る説明があるとより引き込まれたかもしれません。
感想まとめ
第3話は、“能力”というファンタジー設定を持ちながらも、「人が抱える秘密」「嘘をつき続けることの重み」「仮初めの絆」がテーマとして鮮やかに浮かび上がった回でした。文太という“ちょっとだけエスパー”に非日常が降りかかると同時に、彼自身の日常も少しずつ揺らいでいく様子が切なくて面白かったです。
特に印象に残ったのは、「人を愛してはいけない」というルールがどこから来ているのか、そして“仮初めの夫婦”という設定がどちら側の“遊び”で、どちら側が“真実”なのかという揺らぎです。能力+ミッションという外的な展開に加えて、内部の人間関係がじわじわと変化しているのが、このドラマならではの味わいだと思います。
今後への期待と考察
次回以降、私は以下の点に注目したいです:
– 桜介の“息子がいる”という事実が、ミッションや能力とどう結びつくのか?
– 半蔵・円寂・兆という“会社ノナマーレ”の構成員たちのそれぞれの“秘密”が、次第に文太たちの前に立ちはだかるのか?
– そして「人を愛してはいけない」というルールの真の意味。なぜ愛が禁じられているのか?それを破ったとき、能力はどう反応するのか?
このドラマは、ちょっとだけ特別な能力を持った男が“世界を救う”というスケール感とともに、“普通に暮らしたい”“愛したい”“信頼したい”という極めて人間的な願いを描いており、第3話はその両輪が静かに、しかし確実に噛み合い始めた回と言えます。次回の展開が実に楽しみです。
(あいちゃん)
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