『ばけばけ』第28話、北川景子演じるタエ再登場――崩れ落ちた名家の令夫人が映す“明治の影”(感想)(ネタバレがあります)

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第28話は、まるで夢が悪夢に変わる瞬間を見せられたようだった。
北川景子さん演じる雨清水タエが再登場。
あの気高く、美しく、松江の象徴のようだった女性が、今やボロボロの着物姿で路上に立っていた。
その姿を見つめるトキ(高石あかりさん)の震える瞳が、視聴者の心を代弁していた。
この再会シーン、静かで淡々としているのに、まるで雷に打たれたような衝撃があった。

北川景子さん演じるタエ、“没落の美”が胸を打つ

松江でも名家中の名家・雨清水家の女主人だったタエ。
かつては人々の憧れであり、品格と誇りの象徴だった。
そんな彼女が、人々の前で施しを受け、罵倒され、頬を叩かれる。
それでも頭を下げられない。
その一瞬に、彼女の生き方すべてが凝縮されていた。
北川景子さんの“崩れてもなお美しい”姿に、ただ圧倒された。
言葉を発さなくても、「生きるとは何か」「誇りとは何か」を問いかけてくるようだった。

トキ(高石あかりさん)の動揺に共鳴する視聴者

木陰からタエの姿を見つめるトキ。
自分の母親が、かつてとは別人のようになってしまった――その現実を受け入れられない。
声をかけることもできず、ただ立ち尽くす。
高石あかりさんの演技が、本当に繊細でリアルだった。
目の動き、呼吸の速さ、涙をこらえる仕草。
何も言葉にしなくても、「母を助けたい」「でも近づけない」という心の葛藤が痛いほど伝わってきた。
SNSで「トキと一緒に動揺した」「目の前が滲んだ」と共感の声が多く上がったのも納得だ。

“明治の闇”を映すタエの没落

タエの転落は、単なる家庭の崩壊ではない。
急速に西洋化していく明治の社会で、旧家の人々が居場所を失っていく象徴でもある。
誇り高く生きた人ほど、変化に適応できずに壊れていく。
タエはまさに“時代の犠牲者”だった。
「怪談」を愛したヘブン(トミーさん)とトキの物語に通じる、
“見えない何かに取り憑かれたように”生きる人間たちの哀しみがそこにある。
北川景子さんが持つ透明感が、タエの悲劇に静かな説得力を与えていた。

「タエさん」トレンド入り――4年の空白が生む謎

「第19話」で松江を去って以来、4年の歳月を経ての再登場。
あの間に何があったのか――視聴者の想像をかき立てる余白の作り方が巧みだった。
「どうしてここまで落ちたの?」「誰も助けなかったの?」とSNSは騒然。
特に“頭を下げられない”という一点が、彼女のプライドと悲しみを象徴していて忘れられない。
北川景子さんの静かな演技が、余白を何倍にも広げている。
次回、この“空白の4年”がどう語られるのか注目せずにはいられない。

まとめ

第28話は、華やかだったものが音もなく崩れ落ちる、圧巻の回だった。
北川景子さんの再登場は、“美の凋落”と“誇りの矛盾”を完璧に描き出していた。
高石あかりさんとの母娘の再会はまだ果たされていないけれど、
あの視線の交錯だけで、すでにひとつの物語が終わったような重みがあった。
『ばけばけ』というタイトルに込められた“人が人でなくなる瞬間”――
タエの姿はまさにその象徴だった。
そして、この作品がただの朝ドラではなく“人間の再生譚”であることを改めて感じさせてくれた。
(ちーず姫)

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