歓迎会という舞台裏の揺らぎ
第5話を観てまず感じたのは、表向きは温かな「歓迎会」でありながら、登場人物たちの内面には微妙な揺らぎが静かに蓄積されていたということです。
「できても、できなくても」において、建築事務所のメンバーが集まった自宅での会。そこで発動した「将来設計アプリ」で、真央(山中柔太朗)が「好きな人がいる」と明かした瞬間、水乃(鶴嶋乃愛)の胸中が大きく動き、翠(宇垣美里)もまた真央と幼馴染・エリカ(水崎綾女)から知らされた“過去のトラウマ”によって動揺します。
その夜、水乃に危険が迫るという不穏な展開が重なり、「見えない亀裂」が一気に浮かび上がった印象でした。
良かったこと
告白が引き起こす連鎖の描写
真央の「好きな人がいる」という言葉はごく軽やかに聞こえましたが、水乃にとっては衝撃そのもの。水乃が長年寄せてきた想い、そして翠と真央の間に漂う何かを感じ取った瞬間、このドラマが“恋愛”だけでなく“信頼”や“距離”を描いていることが鮮明になりました。
さらに、翠が真央の過去を知ることで、彼女自身が立っていた地盤が揺らぐ描写も胸に残りました。「幼馴染」だからこそ“言えなかったこと”がある――その思いが画面を通して伝わってきました。
緊張の導入としての“危険”の予兆
水乃のリアクションの掘り下げが浅めに感じた
水乃が真央の告白を受け取る瞬間、その動揺の大きさは伝わりましたが、もう少し「なぜ今この言葉が、これほど衝撃なのか」の背景を映してほしかったと感じました。これまでの水乃の思いや、翠との関係において「どう自分を位置づけてきたか」が、少しだけ置き去りにされていたように思います。
危険の影が提示されたものの展開が先送りに
「水乃の身に危険が迫る」というフレーズがエッジの効いた引きですが、実際にその危険がどのように動き出すか、まだ見えない状態で終わったため、次回への期待は高まる反面、一瞬“宙ぶらりん”な感覚も伴いました。
感想まとめ
第5話では、「言葉」と「告白」という瞬間が、登場人物たちの内面の地盤を揺らし、さらに「気づき」と「不安」の波紋が物語を静かに広げていました。
真央の告白、水乃の動揺、翠の動き、そして過去のトラウマ――これらがそれぞれの視点で絡み合い、恋愛ドラマとしてだけでなく、人の心に秘められた“見せない事情”を浮かび上がらせていたと思います。
加えて、「危険」という外圧が提示されたことで、登場人物の私的な揺らぎが社会や仕事、他者との関係へと跳ね返る予感もあり、とても興味を惹かれました。
今後への期待と考察
次に特に注目したいのは、以下の点です:
– 水乃に迫る“危険”とは何か?誰が、何を、なぜ?
– 翠が真央の過去のトラウマを知ったことで、彼女の“立ち位置”がどう変わるか。幼馴染という枠外で真央を見るようになるのか。
– 真央自身は“好きな人”という告白の背後にどんな思いを持っていたのか。アプリという軽い手段で出た言葉が、果たして真央の核心を示しているのか。
このドラマは、「できても」「できなくても」というタイトルの通り、“叶うかどうか”よりも“それを引き受けるかどうか”に焦点を当てているように思います。第5話は、その問いが少しだけ輪郭を見せた、非常に大切な回だったと感じました。
(あいちゃん)

