すべての恋が終わるとしても 第5話 感想文(ネタバレがあります)― 嘘で守ろうとした想いと、終わりを知るからこそ見える絆

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愛のかたちと“終わり”が交錯する瞬間

第5話では、大学4年生の大崎真央(神尾楓珠)が、恋人・羽沢由宇(葵わかな)との将来のために夢を諦めようとしていた由宇を前にして、思わず口論し、別れを告げたその直後に「大腸がん」の診断を受けるという衝撃の展開が描かれました。真央は由宇を傷つけまいとして、「好きじゃなくなった」と嘘をつき、自分の病を隠し続ける選択をしました。
その後、再会を機に由宇に心惹かれていくものの、偶然由宇が同僚・野北駿太郎(白洲迅)と食事に出かけた姿を目撃して倒れてしまうという物語構造が、切なさと緊張感を同時に運んできました。

良かったこと

嘘と愛、守るための選択が深く響いた

真央の選択、「好きじゃなくなった」という嘘は、一見すると恋を断ち切るための言葉ですが、内側には「由宇の未来を奪いたくない」「自分の病を振りかざしたくない」という思いが深く根付いていました。
この“優しそうで実は自己防衛”の構図が丁寧に描かれていたことで、ただの悲恋ではなく、人間の弱さ・葛藤・孤独が際立っていました。
由宇が「どうして言ってくれなかったの?」と問いかけたシーンでは、真央の嘘が彼女を守るつもりだったこと、けれど結果的には彼女を遠ざけてしまったこと、その矛盾が胸に迫りました。

病と向き合う姿が“生きる”というテーマを浮かび上がらせた

物語は真央の「余命3ヶ月」という現実を明らかにし、恋愛ドラマに「時間」と「終わり」の概念を導入しました。
「あと2年」と呟く真央のシーンや、病院の診察券を由宇が見つけるという伏線回収は、単なるラブストーリーを超えて、「今をどう生きるか」という問いを視聴者にもたらしました。
恋だけではなく、人生そのものに向き合う動きが、ドラマとしての重みを着実に増していたと思います。

気になった・もう少し欲しかった部分

由宇の内面変化がもう一押し欲しい

由宇が真央の嘘を知り、彼を抱きしめる場面は感動的でした。しかし、由宇が真央との別れと現在の選択(野北との食事など)をどう整理していったのか、その心の軌跡がもう少し描かれていたら、彼女の決断にもっと共感できたと感じました。
特に、真央を思い続ける由宇と、未来に進もうとする由宇の間で揺れる描写が、さらに丁寧だと良かったです。

病気の進行と恋愛のバランスに少し雑さも感じた

「肝臓に転移してステージ4」「余命3ヶ月」という展開は非常に重いですが、恋愛パートと病気のパートが同時進行する中で、時にどちらに視点を置くべきかが曖昧になる瞬間がありました。
例えば、真央が倒れたシーンから病院シーンへの移行が少し急で、感情の余白がもう少しあったら、より深い余韻を残せたかもしれません。

感想まとめ

第5話は、「恋」の物語が「生と死」「嘘と真実」「守ると壊す」という二項対立を内包しながら進んでいく、非常に質の高い回だと感じました。
真央は自分の命のタイマーを抱えたまま、由宇への想いを封じ、そして再び揺らぎ始めます。由宇はその想いを受け止めようとしますが、二人の間にある「嘘」「時間」「残りの人生」が、簡単に解けるものではないことを明らかにしていきました。
そして、このドラマがただの“別れの恋”を描いているわけではなく、「大切な人に対して、自分はどう向き合えるか」「死を意識した時、何を選び何を手放すか」という問いを提示していることが、今回の回からよりはっきりと伝わってきました。

今後への期待と考察

次回以降、注目したいのは以下の点です:

– 真央と由宇が、嘘と向き合ったうえでどう“再構築”していくか。抱えた病が二人の関係をどう変えるのか。
– 由宇が本当に前へ進もうとした野北との関係が、どのように揺らぐか。「忘れるための恋」という設定が、由宇にとってどう意味をもつのか。
– 真央の今後の闘病姿勢と、彼の創作=イラストレーターとしての仕事が、「生きる証」としてどう描かれていくのか。
– そして、「終わる恋」という枠を超えて、この作品が示す“続く愛”の形とは何か。別れること、離れること、でも消えないもの――それらをどう見せてくれるのか期待しています。

このドラマは、「すべての恋」が終わるとしても、そこに残る“何か”を見せてくれるようです。第5話は、その“何か”が確かに立ち現れた、印象深い回でした。
ぜひ次回も、この二人の軌跡を見守りたいと思います。
(あいちゃん)

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