終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに- 第5話 感想文(ネタバレがあります)― 遺された想いと、再会ではなく “足跡を辿る旅”の意味

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揺らぐ家族の絆と、語られぬ過去

第5話を観てまず心を掴まれたのは、「遺品整理」という穏やかな職業設定の裏に、思いもよらぬ家族の闇が潜んでいたことです。主人公・鳥飼樹(草彅剛)は、友人である磯部(中村雅俊)から、息子・文哉の死が“自殺”とされたものの、その部屋には証拠となる遺品がなく“何者かによって持ち去られた形跡”があるという告白を受けます。会社・御厨ホームズとの関係性も浮上し、「隠蔽ではないか」という疑念が生まれます。

一方、依頼先のこはる(風吹ジュン)の“生前整理”が進む中、娘・真琴(中村ゆり)は「かつて愛した父にもう一度会わなくていいのか」とつぶやき、母と娘の関係にも亀裂が。そんな中、樹が天袋で“思い出の文箱”を見つけ、真琴とともに伊豆へ「母の愛した男・まだ見ぬ父」の足跡を辿る旅に出る――。この旅の中に、待望の再会ではなく「探す」「知る」「整理する」というテーマが浮かび上がります。

同時刻、ゆずは(八木莉可子)のもとには、母・真理奈(雛形あきこ)が再び金銭を無心しに来ており、渡せないと断るゆずはに対して母が驚くべき提案を持ちかけ、その会話を海斗(塩野瑛久)が物陰から耳にしてしまう…という展開もあり、2つの“母と娘”の物語が交錯していました。

良かったこと

“旅”という装置によって露わになる感情の深さ

伊豆まで出向いての母の過去探しという展開は、一見するとドラマティックですが、その中で見えるのは“愛してはいけなかった人を想った記憶”や“残された者の問い”です。真琴が「もう一度父親に会わなくていいのか」と言った瞬間に母・こはるが激怒するシーンも、その問がタブーであったことを象徴しており、静かに胸に残りました。

遺品=記憶というテーマの提示が効いていた

樹が見つけた文箱には、真琴の父親にまつわる思い出の品が入っており、遺品整理という仕事の意味がただモノを片づけることではなく、「遺された想いや記憶を整理すること」だと改めて示されました。こはるが笑顔で思い出の品を手にする場面は、ドラマ全体の温かさを支える一方で、過去に抱えた苦しみの片鱗も隠していて、感情のバランスが上手いと感じました。

気になった・もう少し欲しかった部分

“御厨ホームズ”と文哉の死の背景がもう一段深ければ

文哉の死と勤務先・御厨ホームズの関与が示唆されているものの、なぜ遺品が消えたのか、会社がどれだけ動いたのか、まだ明確な描写が物足りなく感じました。ミステリー要素として興味深いだけに、ここがもっと掘られると、物語の重みがさらに増したと思います。

ゆずは・真理奈の母娘関係の描写が急展開気味に感じた

毒親とも言える母・真理奈の金銭無心シーンはインパクトが強く、その分「なぜそこまで追い詰められているのか」「ゆずはがどう反応し続けるのか」が描写としてもう少し時間をかけて欲しかったと感じました。視聴者として感情を追いかけるには、もう少し“余白”がある方が良かったかもしれません。

感想まとめ

第5話は、物語の“表”としての遺品整理と、“裏”としての家族の過去・秘密が交差した回でした。樹と真琴が旅に出るという流れは、事件を解決するための旅ではなく、「知るため」「整理するため」「向き合うため」の旅であり、その距離感がとてもリアルに映りました。

また、母と娘、父のいない娘、過去を抱える男…それぞれの“再会できない/会えない”ものへの想いが、痛く静かに描かれていて、「もう一度愛してはいけない人を想う」その矛盾を観ているこちらにも突きつけてきます。ゆずはの物語も、母親の影に苦しむ若者のリアルとして、しっかりと存在感を放っていました。

今後への期待と考察

次に注目したいのは、文哉の死の真相と御厨ホームズが抱える“何か”です。遺品が消えたという事実、そして会社の長年の自殺者という状況――これらがどのように繋がっていくのか。また、真琴とこはるの“父親問題”がどこへ向かうのか。「出会いなおす」「赦す」「放っておく」のどれかを選ぶとき、どんな結末になるのか、期待が増します。

そして、ゆずは・真理奈・海斗の関係も、ただの副次的エピソードでは終わらない予感があります。母親という存在、自分を守る盾/足かせ、そして金銭的な依存…ここに描かれるテーマもまた、「家族」という枠組みに鋭く切り込んでいます。

このドラマは、ただ“誰かの死”に寄り添う話ではなく、「残された者が何を選ぶか」「どう生きるか」を問う物語です。第5話は、まさにその問いが深まった回だったと感じました。
(あいちゃん)

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