小さな出来事が揺らす関係
第5回では、ヒロト(岡山天音)となつみ(森七菜)が映画を観に出かける “何気ない一日” の中に、小さな亀裂が見え隠れしていました。道中、駅で偶然、釣り堀で怒らせてしまったよもぎ(吉岡里帆)と遭遇。ヒロトとは価値観も生活のペースも異なるよもぎの姿が、ヒロトの“自由な生き方”やなつみとの関係に揺らぎをもたらします。
さらに、帰宅時に住む平屋で雨漏りに気づくという現実的な “住まいの問題” が立ち現れ、彼らの暮らしの土台が揺れ始めていることを暗に示していました。
良かったこと
日常に潜む“ずれ”がリアルに描かれていた
駅でのよもぎとの遭遇は、ほんの短い場面ながら、ヒロトとなつみの関係に「他者の視線」が入り込む瞬間として機能していました。よもぎのヒロトへのイライラが、ヒロトの生活や態度を映す鏡になっていて、「自由」「気まま」「空気を読まない」というヒロトの側面が、なつみにとってどう見えているのかが垣間見えた気がします。
また、帰宅してから気づく雨漏りという“日常の破綻”は、彼らの暮らしがただ心地よく安定しているわけではないという現実を象徴していて、ドラマとして深みがありました。
なつみという視点が少しずつ浮かび上がった
なつみは上京してきた若者で、ヒロトとの暮らしの中で自分の居場所を探しているように見えます。今回、ヒロトの道中・帰宅・家の状況を通じて、なつみが“この場所”“この暮らし”をどう感じているかを想像させる描写が効いていました。「雨漏りをどう思うか」「よもぎとの遭遇をどう受け止めるか」という小さな場面が、彼女の内面を静かに映していました。
気になった・もう少し欲しかった部分
よもぎのキャラクターの掘り下げが浅めに感じた
よもぎがヒロトに対してイライラを抱えてしまう理由や、その背景が少し曖昧に描かれていて、彼女の“何を見ているか”“何を感じているか”がもう少し明確だと、遭遇シーンの重みがさらに増したと思います。
ヒロトにとってよもぎは“異質な他者”として機能していますが、その“異質”の輪郭がもう少しシャープだと、ドラマの緊張も上がったかもしれません。
雨漏りという象徴の捉え方がやや軽めだった
平屋の雨漏りという設定はとても面白い“暮らしの隙間”を象徴していますが、その描写がもう少し丁寧だと、ヒロトとなつみの“暮らす不安”の側面がより切実に伝わったと思います。雨漏り=安心できない屋根という図式が曖昧に終わっていたのが少しもどかしかったです。
感想まとめ
第5回は、特別な事件や大きな転換ではなく、映画デートという日常の中に漂う“ずれ”と、“住まいの揺らぎ”を丁寧に描いた回でした。ヒロトの自由さと、なつみの微妙な距離感、よもぎという他者の視線、そして住まいの雨漏り――これらが重なって、物語が少しずつ動いているのを感じられました。
特に印象的だったのは、「他人がいることで見えてくる自分」「暮らしの中にひそむ問題」が、静かに、しかし確実に浮かび上がっていたことです。なつみにとって、この平屋での暮らしは“安心”でありながらも少し“揺れ”を含んでいる。ヒロトにはそれが当たり前でも、視点を変えると不安の種になり得る――そんな構図が心に残りました。
ただ、次回以降に向けては、よもぎとの関係がどこへ向かうのか、そしてヒロトとなつみの暮らしそのものの“基盤”がどれだけ揺れていくのか、期待が湧きます。
今後への期待と考察
次に注目したいのは、
– よもぎがヒロトにもつイライラがどこから来るのか、その背景。
– 雨漏りという“物理的な問題”が象徴する、ヒロトとなつみの暮らしの根元の揺らぎ。
– なつみがこの平屋で“安心”を見出せるか、それとも“転居”や“別の選択”に興味を持つか。
このドラマは、静かな日常の中に“微かなひび”を見つけ、そのひびが後にどれだけ大きく広がるかを描いているように思います。第5回は、その“ひび”が少しずつ割れ始めた回だったと感じました。
(あいちゃん)

