罠と知りながら踏み込む先にあった地獄
第6話では、莉沙(井桁弘恵)が「これはきっと罠だ…」と感じながらも、ジムで涼(豊田裕大)と二人きりになってしまい、欲望に抗えずキスを交わすという衝撃の展開から幕を開けます。まるで別人のように積極的に莉沙を求める涼の姿。その裏には妻・凪子(山崎紘菜)の「一瞬天国を見せたのち地獄に突き落とせ」という冷酷な命令が潜んでいました。
この瞬間から、莉沙は“恋”でも“救済”でもなく、完全に“罠”の当事者となり、物語は彼女をゆっくりと地獄の坂へと転がしていきます。
良かったこと
感情のねじれと衝突が鮮烈
涼が「君じゃ勃たない」と冷たく言い放つ場面は、理性と欲望が入り混じる中での裏切りの象徴であり、視聴者としても強く胸に刺さりました。莉沙が屈辱に震えながらも声を上げる姿、「あなた頭がおかしいんじゃない?」と問いかけるシーンに、彼女の“守るべき理性”と“壊れゆく自尊心”が交錯していて、とても迫力がありました。
また、涼が妻・凪子に虐待され、その痛みに耐えながら彼女を「助けてくれた唯一の人」と言う構図も、被害者/加害者/愛憎という複雑な立ち位置を浮かび上がらせていて、物語が単純な不倫ドラマではないことを確信させました。
舞台設定と演出が“地獄感”を後押し
ジムという比較的明るい印象の場所が、罠のための舞台として機能している点が巧みでした。契約破棄、出資金返還といった凪子のビジネス的な脅迫、そして盗聴による勝利の笑い――これらがリアルな“地獄の構図”を作り上げています。視聴者として、「何かがおかしい」「安心できない」という気配を終始感じながら観られた点がこの話の成功のひとつだと思います。
気になった・もう少し欲しかった部分
莉沙の意志変化のプロセスが駆け足に感じた
「罠だと分かっていながらも」「欲望に負けた」という導入は強烈ではありますが、恐らく視聴者としてはもう少しだけ莉沙自身の内面の揺れ、葛藤が丁寧に描かれていれば、より共感が深まったかもしれません。例えば「なぜ涼に惹かれたのか」「旦那や妊活との日常にどう疲れていたのか」といった背景が少し薄めに感じられました。
凪子というキャラクターの“なぜそこまで”がもう少し欲しい
妻として、ビジネスパートナーとして、そして復讐者としての凪子の行動原理は非常に強烈ですが、「なぜここまで涼を操り、莉沙を地獄に落とそうとするのか」の動機がもう少し深掘りされていれば、物語の心理的な底がさらに固くなったように思います。
感想まとめ
第6話は、“欲望”“罠”“地獄”というキーワードが映像的にも心理的にも鋭く交差した回でした。莉沙という“普通の女性”が、一瞬のキスをきっかけに奈落の前兆を体験する様子には、恐怖と共感が同居しました。また、涼と凪子の歪んだ絆、そしてビジネスを絡めた支配・被支配の構図が、ただの不倫ドラマを超えて「心理的サスペンス」へと昇華しているのを感じました。
この先、莉沙がどのように“地獄”から抜け出せるか、あるいはさらに深みに沈んでいくか――その行方がとても気になります。
今後への期待と考察
次回以降、注目したいのは以下の点です:
– 莉沙が「地獄の坂」をどう這い上がるか?それとも更に転げ落ちるか。
– 凪子と涼の過去、そして凪子の“出資・契約破棄”というビジネス的な脅迫の背景には何があるのか。
– 涼が「なぎちゃんは僕を助けてくれた」と語った意味、そしてその“助け”がどう彼を縛っているか。
– 莉沙がこの罠にハマったままで終わるのか、自分の意思で反撃するのか――その転換点を見逃したくありません。
このドラマは、軽やかなラブストーリーではなく、道を誤った欲望がどれほど人を蝕むかを描いた“現代の地獄寓話”だと感じます。第6話はその寓話の扉を大きく開いた、衝撃と期待の回でした。次回も目が離せません。
(あいちゃん)

