夢と現実の舞台裏で揺れる“旗揚げ劇団”の今
第7話では、久部三成(菅田将暉)が大御所俳優・是尾礼三郎(浅野和之)を迎え、「夏の夜の夢」初日から1週間を迎えたものの観客は伸び悩み、売上が目標の半分にも満たないという厳しい状況に置かれています。
そんな中で、次回作として選ばれたのはシェイクスピア後期の名作「冬物語」。夢を追う劇団と、現実としての集客・資金・支配人の焦りが交錯し、舞台の“楽屋”の位置が見えなくなっていく様が胸に響きました。
良かったこと
“旗揚げ”という希望と“不安”の共存
劇団クベシアターとして初めて本格的に舞台を立ち上げた久部たちが、理想だけでは食っていけない現実に直面するシーンが印象的でした。目標に対して集客が半減という数字が、ただの失敗ではなく「何が足りないか」という問いを背負わせていて、劇団員たちの焦り・葛藤がリアルに伝わりました。
さらに、支配人・浅野大門(野添義弘)の妻・フレ(長野里美)が「逃げるが勝ち」と田舎へ帰る提案をする一方で、久部の熱意に押されて「もう一度、あんたに賭けてみる」と決意を固める流れも、夢を諦めない姿勢と現実とのギャップが対比されていて見応えがありました。
「勝負」宣言から舞台が“賭け”になる瞬間
翌朝、オーナー・ジェシー才賀(シルビア・グラブ)が売上ノルマの封筒を差し出す場面で、小細工があったという設定から、「これは舞台ではなくビジネスだ」という冷たい真実が垣間見えます。夢だけでは済まされない“舞台の裏側”がしっかり見えてきたのが、ドラマとして深まったポイントだと感じました。
また、是尾を迎えての稽古期間という“助走”から、今まさに“本番=勝負”に突入したという構成も、物語の転換点として機能していて好印象でした。
気になった・もう少し欲しかった部分
集客不振の理由がまだぼんやりしている
観客が伸びないという状況ははっきり描かれていましたが、「なぜこの劇場・この公演で伸び悩んだのか」という分析がもう少し掘られていたら、より説得力があったと思います。演出の問題か、劇場の立地か、プロモーションか…原因の輪郭がもう少し明確だと視聴者としても“次に何をすべきか”がより見えてくる気がしました。
劇団メンバーの置かれた立ち位置にもう少し時間を割いてほしかった
メインの久部・支配人夫妻・オーナーという構図は明確ですが、劇団員・スタッフ・出演者たちの内面や葛藤がもう少し鮮明に出てくると、“旗揚げ劇団”の群像劇としての厚みが増したと思います。特に、出演者の反応、劇場側スタッフの焦り、客席のリアクションなど、もう少し“舞台裏”が見えると深みが増したと感じました。
感想まとめ
第7話は、「舞台作品を作る」という夢の裏にある“経営”と“勝負”という現実を、非常に鮮やかに描いていた回でした。劇団が旗を掲げ、公演を重ねる中で、数字と期待とが交錯し、久部たちは“夢を続ける意味”を改めて問われています。
「楽屋はどこにあるのか」という問いは、舞台の表だけでなく、裏方・稽古場・会議室・資金繰り…あらゆる場所に存在するのだと感じさせられました。夢を信じるだけで成立しない世界、自分たちの居場所を探し続ける過程が胸を打ちます。
今後への期待と考察
次回以降注目したいのは、シェイクスピア「冬物語」の上演準備がどのように具体的に動き出すか、そして観客動員をどう挽回するかという“攻めの展開”です。
また、支配人夫妻・オーナー・劇団員それぞれが抱える“賭け”がどう明らかになるか。久部の情熱はどこまで耐えられるのか。劇団クベシアターが“旗揚げ”から“定着”に向かえるのか。
このドラマは、ただ舞台の成功を描くだけではなく、「どこに居場所を見つけるか」「誰と作るか」「何を捨てるか」を問う群像劇でもあります。第7話は、その問いを改めて提示した重要な節目でした。
(あいちゃん)
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