静かな生活の中に潜む、胸を締めつけるような優しさ
第6話を観て強く感じたのは、この作品が描く“日常の揺らぎ”の美しさでした。
「たそがれステイツ」で過ごす住人たちの生活は、派手さはないものの、誰もが小さな痛みと、誰かを想う優しさを抱えている。
それが静かに滲み出てくる回だったと思います。
特に、ゆず(近藤華)が撮る映画というフィルターを通して、
“奈央と志保という二人の人生”がやわらかく描き直されていくところに、深い温度を感じました。
良かったこと
奈央と志保の積み重ねた時間が丁寧に描かれる
人が苦手だった志保。
笑顔で自分を守ってきた奈央。
そんな二人が高校の頃に出会い、寄り添い、上京して過ごしてきた日々。
ゆずがカメラ越しにその軌跡を聞いていくシーンは、淡々としているのに、胸の奥にじんわりと温かさが広がりました。
そして、キッチンカーという二人の夢が“お金の問題”で現実的ではないことが分かった瞬間、
ゆずが誰よりも心を痛めてしまう姿が、とても繊細で、切なかったです。
家族の記憶が静かに心を揺さぶる
渉・順・あん・ゆず、それぞれが“昔の芝居を観に行った記憶”を思い返すシーン。
渉は客席で一人号泣し、
あんはそれを笑った観客に対して「何がおかしいんですか!」と怒った。
そのエピソードが、今になって家族の間に静かに作用していく――
そんな描写がとても印象的でした。
特に順が、幼い頃の記憶を胸の奥にしまい込んでいた理由を言葉にしていくシーンは、
すれ違い続けてきた親子が少しずつ心を開き合う“気配”を感じさせます。
永島家の疲れと、それでも続く生活のリアルさ
凛と真の育児に疲れ果て、散らかった部屋のソファで眠ってしまう慎一とさとこ。
そこに悲壮感よりも「生きてるなぁ」と思える生活のリアリティがありました。
おでんパーティーの提案で一同が集まり、
わずかな時間でも笑顔になれる空間が生まれる。
その“ほんの短い救い”が、第6話をやわらかく包んでいたように思います。
気になった・もっと見たかった部分
ゆずの“痛み”が少し薄く描かれた印象も
ゆずが奈央と志保を想って苦しむ気持ちは伝わったものの、
ゆず自身が抱えている本当の葛藤――家族の問題、順との距離、将来への不安――が
もう少し深掘りされてもよかったと感じました。
カメラ越しに人の気持ちを映す彼女が、
“自分自身”をどう映しているのかが気になって仕方ありません。
永島家の問題が軽く流れた感も
育児疲れ、散らかった部屋、お酒に頼ってしまう二人の姿はリアルなのですが、
もう一歩だけ踏み込んだ“弱さ”も見たかった気がします。
とはいえ、これは今後描かれていく余白なのかもしれません。
感想まとめ
第6話は、物語の大きな事件があるわけではありません。
けれど、登場人物たちが抱える“静かな痛み”と“ささやかな救い”が積み重なり、
深く心に響く回でした。
ゆずがカメラに収めようとする「人の人生」。
あんと渉が抱える長年のすれ違い。
奈央と志保が選んだ“二人で生きるという道”。
永島家の疲れの中にあるあたたかさ。
一つひとつの物語が、小さなランプのように灯っていく。
そんな優しさと切なさが溶け合う、静かで愛しいエピソードだったと思います。
今後への期待
今後は、
・ゆず自身の「夢」や「選択」
・渉とあんの本心のぶつかり合い
・奈央と志保の夢がどう描かれていくのか
などが焦点になりそうです。
(あいちゃん)

