最終回って分かってるだけで胸がざわざわするのに、冒頭から予想外すぎる展開が来て一気に目が覚めた。
1年見続けてきた物語の終着点なのに、しんみりより先に「え、そこから始めるの?」って気持ちが勝つ。
蔦屋重三郎(横浜流星さん)の人生を締めくくる話なのに、最初に描かれたのは“もう一人の終わり”。
このドラマらしい大胆さに、最後まで油断できなかった。
雷とともに迎えた治済(生田斗真さん)の最期
阿波の孤島へ送られる途中、逃げ出した治済の表情があまりにも必死で怖かった。
追手の声が消えた瞬間に笑い出すあの感じ、最後まで自分を疑ってない人の顔。
「待っておれよ、傀儡ども!」と叫んだ直後に雷が落ちる流れは、あまりにも象徴的。
偶然じゃなく、積み重ねた悪行の行き着く先を見せられた感覚だった。
視聴者が「天罰」って言いたくなるのも自然だと思う。
“変わった髷の男”が残した余韻
治済の死のそばにいたという「変わった髷の男」。
その一言だけで、一気に過去のシーンが頭の中でつながる。
平賀源内(安田顕さん)の存在が、ここで再び浮かび上がるのが震える。
雷獣の絵、雷鳴の日、そして治済の最期。
はっきり描かないのに、意味だけはしっかり伝わる演出がずるい。
蔦重(横浜流星さん)が向き合う“終わり”
治済の死と同時に、蔦重自身の最期も近づいていく。
脚気に侵されながらも、最後まで物事を面白がろうとする姿が切ない。
才能を見つけ、人をつなぎ、流行を生み出してきた人生の集大成みたいな時間。
横浜流星さんの穏やかな表情が、蔦重の生き方そのものに見えた。
斎藤十郎兵衛(※替え玉)の正体が明かされる驚き
治済の替え玉だった斎藤十郎兵衛の立場が、最後に一気に変わるのが面白い。
戻る場所もなく、今の暮らしを悪くないと思っているところがリアル。
そこで蔦重が思いつくのが、斎藤を写楽につなげるという発想。
この“遊び心”が、蔦重らしさの塊だった。
写楽の謎を物語に溶かす鮮やかさ
「東洲斎写楽」に斎藤の名が重なる言葉遊び。
歌麿(染谷将太さん)や重政(橋本淳さん)、政演(古川雄大さん)、喜三二(尾美としのりさん)たちが乗り気になる流れも楽しい。
史実で有力とされる“斎藤写楽説”を、物語として自然に組み込んでくるのが見事。
森下佳子さんの脚本力に、最後まで唸らされた。
見返したくなる最終回の仕掛け
斎藤がこれまで江戸の流行り場に姿を見せていたというナレーション。
歌麿の描いた看板娘の行列の中にも、いたかもしれないと思うと鳥肌。
治済だと思って見ていた人物が、実は斎藤だった可能性。
最終回なのに、「もう一度最初から見たい」って思わせる構造がすごい。
まとめ
最終回は、蔦重の人生だけでなく、江戸そのものを見送るような感覚だった。
治済(生田斗真さん)の最期でスカッとさせつつ、写楽の謎で余韻を残す。
歴史とフィクションをここまで気持ちよく混ぜてくるのは、この作品ならでは。
終わったのが寂しいのに、満足感の方が大きいラストだった。
(ゆめのん)

