新しいステージの幕開けと、小さな異変
第26回でまず心に残ったのは、トミー・バストウ演じるヘブンが、吉沢亮演じる錦織とともに、松江中学校へ“初登校”を果たす場面です。旅館で過ごしてきた日常から、学校という“新たな舞台”へと移ることで、ヘブンの物語が一気に動き出したという印象を受けました。
一方で、借金取りの息子・前原瑞樹演じる森山銭太郎の登場、そして松野家をのぞく「怪しい影」の出現――これらの出来事が同時に重なり、静かな日常が揺らぎ始めたことも強く感じられました。
良かったこと
教育現場という異文化環境の描写
ヘブンが英語のみで授業を行うという宣言、そして生徒たちが「先生についていきます」と応えるシーンには、「文化の壁」「言葉の壁」「教師と生徒の関係性」というテーマが詰まっていました。旅館という家庭的・地域的環境から一転、学校という公的・制度的環境へ移ることで、物語に新たな緊張感が生まれていました。
また旅館での「ウメさんを病院へ連れて行け」というヘブンの叱責シーンでは、ヘブンの“責任感”と“異邦人としての立ち位置”が見えてきて、印象的でした。
物語の裏側にある見えない力の存在感
森山銭太郎の登場や、松野家を覗く影という“不穏な要素”が、単なる日常ドラマではなく“何か大きな転換点”へ向かっているという予感を強めてくれました。借金取りという古典的な脅威が、地域と家庭の関係を揺さぶる構図として機能しており、ヘブンの新しい立場・役割と絡めることで、世界観がぐっと広がったように感じました。
気になった・もう少し欲しかった部分
学校や地域の文脈の説明がやや浅め?
ヘブンの授業開始の雰囲気や生徒たちの反応は描かれていましたが、松江中学校という学校の背景、地域の期待やヘブンの採用に至る経緯といった“なぜこの学校で”“なぜ外国人教師”という説明がもう少し深ければ、物語にさらに厚みが出たと思います。
また、錦織の役割・彼がヘブンを支える立場としてどう動くのか、その描写がもう少しあると、視聴者として“二人の関係”がもっと引き込まれたでしょう。
松野家を覗く影と、その意味合いの掘り下げ
怪しい影という描写は効果的でしたが、なぜその影が松野家を狙うのか、どういう意味を持つのかが少し曖昧に感じました。人物の登場によって「何が起きるか予感させる」こと自体は優れていましたが、その伏線としての回収や次にどう繋がるか、もう少しクリアにしてほしいと思う部分もありました。
感想まとめ
第26回は、ヘブンが旅館を出て学校という新しい“場”に身を置くという大きな転換点であり、同時に松野家を巡る影や借金取りという“過去・影”の存在が浮かび上がる回でした。ヘブンの英語授業という異文化融合のテーマ、そして地域・家庭・教育という複数レイヤーが交わる構図がこの回の魅力です。
ただ、その複数のテーマが同時に動き始める分、「もう少し丁寧な描写」を期待してしまう部分もありました。それでも、物語が明確に動き出していることを実感でき、次回以降の展開にワクワクさせられました。
今後への期待と考察
次に注目したいのは、ヘブンの授業が地域・生徒・家族にどう受け入れられていくか、そして地域の“影”として松野家を狙う者の意図が何なのかです。
さらに、トキやサワたちの動きがどのくらいヘブンの物語と交差していくか、「旅館を出た先の新しい生活」がどう描かれるかが鍵になるでしょう。
このドラマは、ただの地域ドラマや教育ドラマではなく、「異文化」「転換」「影」というキーワードを通じて、日常の裏に潜む“もうひとつの世界”を描いていると感じます。第26回は、その“裏”の世界が確実に顔を出した、非常に重要な回だったと思います。
(あいちゃん)

