旅館でのケンカ、そして新たな“住処”探し
今回は、トキ(髙石あかり)とフミ(池脇千鶴)が〈花田旅館〉でしじみ売りに訪れたところからスタート。そこに、ヘブン(トミー・バストウ)と平太(生瀬勝久)がけんか中という知らせが入り、観ていて「何が起きた?」と引き込まれました。
その後、ヘブンが旅館を出たいという願いを錦織(吉沢亮)に相談し、加えて知事(佐野史郎)から「世話をする女中も探せ」という難題を突き付けられるという展開。ヘブンの暮らしをどう支えるか、という“異文化交流”だけでなく“暮らしの再構築”がテーマになっていました。
「女中」探しという時代の選択肢
錦織が女中探しを始める中で、遊女であったなみ(さとうほなみ)が候補に名乗り出ます。知事の「どっちもできる女中がいいわね」という言葉に、時代背景としての「女中=家事全般+夜の世話」という暗黙の意味合いがちらつき、今の感覚では考えさせられるものがありました。
なみの「洋妾になろうとしていた」覚悟や、トキに「女中ならどうか」と声がかかることなど、女性たちが立たされている選択の重さが深く印象に残りました。
良かったこと
異文化×時代背景が重層的に描かれていた
アメリカから来たヘブンという外国人、松江という場所、明治時代という社会構造。その中で「旅館を出る」「女中を探す」という事柄がただの物語の進行ではなく、生きるための選択として感じられたのが良かったです。
また、しじみ売りのトキ&フミという“生活のリアル”から、ヘブンの住まい探しという“人生の転機”までが一本の流れとして描かれていて、作品としての厚みを感じました。
女性キャラクターたちの選択が力強くも脆い
なみが名乗り出るシーン、トキに声がかかるシーンなど、「これからどうするか」という選択の瞬間が丁寧でした。なみの過去、トキの家族、フミの支えといった背景も見え隠れし、誰もが“与えられた道”ではなく“選ぶ道”に向かっているのだと感じさせられました。
気になった・もう少し欲しかった部分
トキ・フミのしじみ売り描写の目的が少し曖昧に感じた
しじみ売りという日常エピソードが冒頭に配置されていたのですが、「なぜ今この仕事?」という背景がもう少し描写されていれば、トキ&フミの立ち位置や物語との接点がさらに明確になったと思います。
「“そうでもせんと”」という台詞で補われていましたが、視聴者としてはもうひとつ“なぜ”が欲しかったです。
女中探しの過程が少し駆け足に感じた
なみが候補として名乗る流れ、錦織がトキに声をかける流れともに、スムーズすぎるくらいに進んだ印象があり、「これが運命の提案か!」という期待感にはつながりましたが、もう少し葛藤や迷いを挟んでも良かったなと思いました。
感想まとめ
第27回は、生活のリアルと社会の構造が交差した濃い回でした。旅館での日々から、新たな生活環境への移行、そこに関わる人々の“選択”と“立場”が丁寧に映し出されていて、物語としての奥行きを感じました。特になみの覚悟、トキの提案を受ける瞬間、そしてヘブンが“旅館を出て一人暮らしを始めよう”という決意に触れるあたりは、視聴者としても「この物語はただの変化ではない」と思わされました。
今後への期待と考察
次回以降、私が注目したい点は以下です:
– ヘブンの新しい住まいでの暮らしがどう描かれるか。旅館を出るという選択が彼自身/周囲にどんな影響をもたらすか。
– なみが女中としてどのように立っていくか、またその「女中=何が期待されるか」という時代的枠組みがどう描かれるか。
– トキ&フミのしじみ売り・家計支えという日常線が、物語の中でどの位置に据えられていくか。
– 異文化、社会変化、女性の選択というテーマがさらに深まり、「松江」や「明治」という舞台設定がより活きていくことを期待します。
第27回は、これらの問いを改めて提示した、視点を広げる重要な回だったと感じました。
(あいちゃん)

