『ばけばけ』第33話、三之丞の沈黙が痛すぎる(感想)(ネタバレがあります)

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第33話、静かで、苦しくて、胸の奥がずっと痛い回だった。
高石あかりさん演じるトキの優しさと、板垣李光人さん演じる三之丞の沈黙。
どちらも正しくて、どちらも切ない。
握り飯を食べられないほどの罪悪感と、誰にも言えない誇り。
“明治の光と影”が、二人の心を通して淡く描かれていた。

トキの優しさが、届かない優しさに変わる瞬間

ヘブン(トミー・バストウ)のもとで働きながら、
一ヶ月分の給金20円のうち半分を遠縁の三之丞に渡そうとするトキ。
「お母さまと家を借りて暮らして」と願うその表情に、
他人の痛みを自分のことのように感じるトキの優しさがにじむ。
けれど、その“施し”が三之丞には耐え難い屈辱になる。
かつて名家の三男だった彼にとって、それは現実の敗北の証。
受け取る手が震えていた。
高石あかりさんの静かな演技が、朝の時間とは思えない深さを見せた。

三之丞の沈黙、言えなかった「ありがとう」

破れ寺に戻り、タエ(北川景子さん)に何も言えない三之丞。
その夜、母が竹の皮のご飯粒を丁寧に口へ運ぶ姿を見ながら、
三之丞の目には涙が溜まっていた。
それでも「お気をつけて」としか言えない。
言えば楽になるのに、言えない。
“誇り”と“情けなさ”が胸の中でせめぎ合う。
野良犬に渡した握り飯――あの一瞬が、彼の心の叫びに見えた。
誰かを守りたいのに、何もできない若者の無力さ。
板垣李光人さんの繊細な演技が心を締め付ける。

「なして…」と呟いたトキの絶望

タエを物乞いしている姿で見つけたトキ。
“なして…”と声を震わせた瞬間、画面全体が止まったようだった。
お金を渡していない三之丞を責める気持ちよりも、
「信じていたのに」という悲しみが先に来る。
善意が届かない現実。
それでも責めることができないトキの優しさが、逆に痛い。
“正しさ”が人を苦しめることがある――
そんなテーマが、朝ドラの枠を超えて胸に刺さった。

母と子、そして誇りの物語

タエが息子に「ご飯粒を残すな」と言う姿。
それは生きる意地であり、愛の形。
三之丞の“何も言わない選択”もまた、愛と誇りの表現だったのかもしれない。
「貧しい」というより「気高い」。
この親子の描写に、静かな祈りのようなものを感じた。
明治という時代の残酷さが、血の通った人間の心で描かれていた。

SNSの声、「三之丞が不穏すぎる」「言えない理由が気になる」

放送後、SNSは“三之丞”の名でざわめいた。
「どうして言わないんだろう」「嫌な予感しかしない」「まさか母を置いて行かないよね」
「トキの嘘に気づいているのかも」と考察が飛び交った。
“物語の静けさが怖い”という声も多く、
この作品の“余白の力”が視聴者の想像を呼び起こしている。

まとめ

第33話は、“言葉にならない思い”が描かれた回だった。
トキの善意、三之丞の誇り、タエの生きる力。
それぞれが違う形の愛でつながっていて、
誰も悪くないのに、みんなが少しずつ傷ついている。
握り飯一つでここまで物語が深くなるなんて。
“朝ドラ史上もっとも静かなクライマックス”が、今まさに始まっているのかもしれない。
(ちーず姫)

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