第12話は、静かな家庭の一幕が一気に崩れ落ちるような回だった。
三之丞(板垣李光人さん)が主人公・トキ(高石あかりさん)に怒りをぶつける場面は、ただの感情爆発ではない。
彼の中に積み重なっていた“無力さ”と“責任”の重さが一気にあふれ出した瞬間だった。
SNSでは「三之丞が不憫すぎる」「泣きながら怒る演技がリアルすぎた」と、彼への共感と称賛の声が続いた。
金策に奔走する家、崩れゆく日常
物語の舞台は、トキ(高石あかりさん)が働く機織り工場。
景気悪化により資金繰りが限界を迎え、社長であり親戚の雨清水傳(堤真一さん)は奔走するも、ついに倒れてしまう。
家を支えるはずの家族も女中を解雇せざるを得ず、雨清水家の中には不安と焦りが満ちていく。
三之丞(板垣李光人さん)は急遽社長代理に任命されるが、若くして突然背負わされた“家の重み”に押しつぶされていた。
椅子に座っていることしかできない彼の姿が、なんとも痛々しい。
“跡継ぎ”としての期待と、何もできない現実の狭間で苦しむ青年の葛藤が、静かに伝わってくる。
焦げた米と、崩れ落ちる誇り――母・タエの無力さ
傳の妻・タエ(北川景子さん)が粥を焦がすシーンは、象徴的だった。
“名家の誇り”にしがみつく母が、初めて自分で米を炊こうとして失敗する。
その火を消そうとするトキに「おゆきなさい!」と怒鳴るタエ。
その言葉の裏には、“助けられる自分”を受け入れられない屈辱がにじんでいた。
北川さんの張り詰めた声と、焦げた匂いの中に漂う哀しみが絶妙で、
この一家が少しずつ崩れていく様子を、たった一つの炊事シーンで描き切っていた。
「ならどうすればいいんだよ!」――三之丞の叫びが突き刺さる
トキが「おばさまに看病は無理でございます」と提案した瞬間、
三之丞の中で押し込めていたものが弾けた。
「ならどうすればいいんだよ! 何でもかんでも押し付けないでくれ!」
涙をこらえながら怒鳴る姿は、幼さと責任感の間で揺れる青年そのもの。
板垣李光人さんの演技は、怒りよりも“悲しみ”が滲んでいた。
彼の震える声に、見ているこちらまで胸が熱くなった。
「もう限界だったんだね」「怒りながら泣いてるのがリアル」とSNSで共感が広がったのも当然だ。
押し付けられる“役割”と“優しさ”の裏返し
三之丞は、“家を守れ”と期待され、“母を支えろ”と求められ、
気づけば自分の感情を押し殺すことが当たり前になっていた。
そんな彼が初めて感情をあらわにしたのは、弱音を吐ける相手がトキだから。
「どうすればいいの」と叫ぶ姿には、彼なりの“助けを求める声”があった。
怒りの裏に潜む優しさ――それを感じ取るトキの表情もまた、切なく温かかった。
SNSの反応、「三之丞が愛おしい」「押し付けられても優しい」
放送後、SNSでは「三之丞、急に社長代理とか酷すぎる」「泣いて怒る姿が綺麗だった」「トキにだけ本音を出せるのがいい」といった声が多数。
中には「板垣李光人の泣き方が本当に繊細」「この兄弟の関係、これから深くなりそう」と、演技と人間関係の描写を称える意見も見られた。
静かなシーンの中で、怒鳴る声が逆に痛いほど響いた――そんな印象を残した回だった。
まとめ
第12話は、豪華なセットや派手な展開がなくても、人間の感情だけで心を震わせる見事な回。
三之丞の涙は、怒りではなく“責任を背負う者の悲鳴”だった。
高石あかりさんの控えめな優しさ、板垣李光人さんの繊細な激情、
そして北川景子さんの誇り高き母の存在――どれもが絶妙なバランスで響き合っていた。
“助けたい”という想いが、誰かを傷つけてしまうこともある。
それでも人は支え合おうとする――その優しさを描いた、美しく苦しい一話だった。
(ちーず姫)