第26話、静かな朝ドラの中で、最後の数秒が心をさらっていった。
松野家の外に立つ影。顔が映らないまま去っていくその背中が、たまらなく切なかった。
光も音もやわらかいこのドラマの中で、闇の輪郭だけが浮かび上がる。
「もしかして三之丞(板垣李光人さん)?」という予感が流れるSNSのざわめき、みんな同じ瞬間に息を止めてたと思う。
トキ(高石あかりさん)とヘブン(トミー・バストウさん)の穏やかな日常に忍び寄る影
英語教師として松江にやってきたヘブン(トミー・バストウさん)が初登校する朝。
通訳の錦織(吉沢亮さん)との掛け合いが明るくて、まるで陽の光みたいだった。
一方、トキ(高石あかりさん)は幼なじみのサワ(円井わんさん)が教師になったことを本気で喜んでいて、花を手渡す仕草が優しさそのもの。
けれど、そんな穏やかな時間に現れたのが借金取りの森山銭太郎(前原瑞樹さん)。
善太郎(岩谷健司さん)が亡くなった今も、松野家に押しかけて金を巻き上げていく無情さ。
トキの表情が一瞬で曇って、光のある場面が陰るのが切なかった。
サワ(円井わんさん)の勇気と、見えない“誰か”の存在
外に立っていた影に気づいたサワが、「松野さんに御用ですか?」と声をかける場面。
その声には、教師としての責任感と、友としての優しさが混ざっていた。
でも、その人物は顔を見せずに下を向いて逃げる。
言葉を交わさない静けさが、逆に不穏で哀しい。
円井わんさんの“気づいても追わない”絶妙な芝居が、このシーンをさらに深くしていた。
逃げた背中に残る影だけで、見る人の心をざわつかせるってすごい。
三之丞(板垣李光人さん)だったのか──再登場の意味
SNSでは放送直後から「三之丞の名前がクレジットにあった!」と話題に。
トキの生家・雨清水家の三男である彼が、どうして松野家を覗いていたのか。
顔は映らなかったのに、あの姿勢、あの背中の線だけで“彼だ”と分かる人が多かった。
「薄汚れてた」「生活苦しそう」「切ない」っていうコメントも多くて、みんな心配してた。
明治という時代の中で、落ちていった人たちの現実を、たった数秒で見せてくるのがこのドラマの巧さ。
三之丞の再登場は、優しい世界の中に潜む“失われた者の物語”の始まりなのかもしれない。
「怪談」を通して描かれる、生きている人の寂しさ
『ばけばけ』って、幽霊や怪異の話じゃなく、“今を生きる人”の物語なんだと思う。
ヘブン(トミー・バストウさん)の異国の明るさと、トキ(高石あかりさん)の日本的な静けさ。
その間にいる人たちの孤独や、時代に取り残された哀しみを、まるで風のように描く。
「怪談」がこの作品の中心にあるけど、本当は“人の心”がいちばん怖くて、いちばん温かい。
今回の三之丞の影も、そのテーマの一部として完璧に機能していた。
まとめ
第26話は、静けさの中に大きな波を感じる回だった。
トキ(高石あかりさん)の穏やかさ、ヘブン(トミー・バストウさん)の明るさ、サワ(円井わんさん)の強さ。
そのすべての裏で、三之丞(板垣李光人さん)が再び物語に現れた意味が、次回への不穏な予感を残した。
“顔を見せない再登場”って、こんなにも心を動かすのかと驚く。
この一瞬が、これからの「ばけばけ」を大きく変える始まりに感じた。
(ちーず姫)

