べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜 第41回 感想文(ネタバレあります)― 出世と退き際、そして揺らぐ忠誠の真意

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退き際に見せた覚悟と、変わらぬ野心

第41回では、主人公・横浜流星演じる蔦重が、老舗版元・里見浩太朗演じる須原屋を訪ねる場面からストーリーが動き出します。須原屋が二代目に店を譲り引退を決める中、蔦重は「新しい商品」をどう世に出すか、つまり歌麿(染谷将太)と「婦人相学十躰」の売り出し方を真剣に思案する。新たな挑戦を目前にしながらも、旧体制の変化を受け入れる描写が、蔦重の “次のステージ” への覚悟を感じさせました。

良かったこと

老舗と新勢力の交代の緊張感

須原屋が「引退」を口にする瞬間に流れる空気。老舗が幕を引くという一大転換点において、蔦重の姿勢がぶれることなく描かれていたのが良かったです。伝統を守る側と、革新を目指す側。二代目が継ぐという局面で、蔦重がその“継承”にどう関わるのか――その問いが観ているこちらにも響きました。

身体の異変と陰に潜む謎

一方で、つよ(高岡早紀)の身体に異変が起きるという展開が、物語に新たな不穏さを生み出していました。出版・出版業という華やかな世界の裏側に、人の身体、運命、不安という影が忍び寄っている感じがして、「ただ売る/出す」という能動的なテーマだけでなく、「これからどうされるのか」という受動・被害的なテーマも入り込んできたのが深かったです。

気になった・もう少し掘ってほしかった部分

定信(井上祐貴)の辞職願と背景の説明の薄さ

今回、家斉(城桧吏)の嫡男・竹千代誕生の場で、定信が「将軍補佐と奥勤め、勝手掛の辞職」を願い出る場面がありました。瞬間としては衝撃的でしたが、それまでの定信の心情変化や動機がもう少し丁寧に描かれていれば、視聴者として“なぜそこまで”という納得感が高まったと思います。

「婦人相学十躰」の売り出し策の具体性不足

蔦重と歌麿が取り組もうとしている「婦人相学十躰」の新刊(?)案。抽象的に「どう売るか」を語るシーンは良かったものの、もう少し“どういう女性像を描いたのか”“どう変化を打ち出すのか”といった具体があれば、蔦重の革新的姿勢がさらに光ったと思います。

感想まとめ

第41回を観て、伝統から革新へ、個人の変化から時代の変化へ、という転換期が明確に打ち出された回だと感じました。蔦重は、単なる出版業の若手としてではなく、時代を変える旗手としての位置に少しずつ立ち始めています。その一方で、つよの異変や定信の辞職願という“静かな裂け目”が、華やかな舞台の裏で確実に広がっているという得体の知れなさも加わり、物語全体に緊張感が戻ってきた気がします。

また、版元の世代交代というテーマだけでなく、そこに関わる人々の「寿命」「代替」「役割」が浮かび上がるあたり、単純な勝ち負けの構図を超えた奥行きを感じました。蔦重の覚悟、新刊の構想、そしてその裏側で静かに進行する異変――この三本柱がこの回の看板だと思います。

次回への期待と考察

次回は、つよの身体の異変がどのような展開を迎えるのか、そして定信の辞職願が幕府内部/出版界にどう波及するのかが注目です。また、「婦人相学十躰」の売り出しが実を結ぶのか、それとも思わぬ障害を抱えるのか。蔦重が“革新”を志す中で、彼を取り巻く伝統・権力・人間関係が試される展開になりそうです。

このドラマは、ただの時代劇ではなく「変化と継承」「個人と社会」「見えない影との闘い」を描く群像劇としても魅力的です。第41回は、まさにその深みに踏み込んだ回だったと思います。
(あいちゃん)

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