『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第42回、歌麿の“恋心”と決別の涙が痛すぎた(感想)(ネタバレがあります)

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第42回「招かれざる客」、息詰まるような静けさの中で、蔦重(横浜流星さん)と歌麿(染谷将太さん)の関係が決定的に揺れた。
ずっと信頼し合ってきた二人の間に生まれた“すれ違い”が、こんなにも切なく描かれるなんて。
商いの現実と絵師の矜持、そしてほんの少しの恋。
それぞれが間違っていないのに、どうしても同じ道には立てない――そんな痛みが、画面全体を包んでいた。

蔦重(横浜流星さん)の焦りと優しさが交錯する夜

地本問屋に加えて書物問屋も始め、ようやく軌道に乗りかけた蔦重(横浜流星さん)。
華やかな江戸の空気を取り戻そうと必死に動く姿は、まるで時代を走る風そのもの。
でも、その勢いの裏で見えたのは、焦りと孤独。
てい(橋本愛さん)の妊娠を知って、嬉しさと不安が混じる笑顔が一瞬だけ映った時、心がチクリとした。
守りたいものが増えるほど、蔦重は“正しさ”を選べなくなっていく。
その真っ直ぐな愛情が、誰かを傷つけてしまう現実が辛い。

歌麿(染谷将太さん)の“絵師としての誇り”と“人としての恋”

商いのために絵を描くことと、心を込めて描くこと。
その境界で揺れる歌麿(染谷将太さん)の表情が痛いほど繊細だった。
蔦重から「弟子に描かせて仕上げだけすればいい」と言われた時の沈黙、あれがすべてを語っていた。
「一枚一枚、命を込めて描きたい」――そんな絵師の信念が、商いの論理に飲み込まれそうになる瞬間。
蔦重への尊敬と、どこかにある恋心。
その狭間で揺れる眼差しが、美しすぎて苦しい。

“借金のかた”の言葉が壊した信頼

蔦重が吉原の親父たちに提案した“女郎の大首絵”の企画。
それを聞いた歌麿の「それ、借金のかたに俺を売ったってこと?」という台詞が刺さりすぎた。
蔦重の中には悪意なんてない。
ただ、ていの妊娠という現実と、店の立て直しの焦りが重なって、思考が止まっていた。
「お前だけが頼りなんだ」と頭を下げる蔦重の姿に、もう言葉が出なかった。
信頼しているからこそ、心が折れるほどの失望になる。
ふたりの間に流れた静かな時間が、どんな叫びよりも重たかった。

万次郎(中村莟玉さん)の言葉が歌麿を動かす

西村屋(西村まさ彦さん)とともに現れた万次郎(中村莟玉さん)の言葉は、まるで運命の刃だった。
「先生は蔦屋さんのもとで描くだけでよろしいので?」
その問いが、歌麿(染谷将太さん)の胸を突いた。
蔦重を裏切りたくない。でも、絵師としての自分を守りたい。
その葛藤の果てに出した答え――「この仕事を描き終えたら、蔦重とは終わりにします」。
穏やかな口調なのに、心の中では血が流れているような痛みがあった。
あの場面の歌麿の静けさは、まるで涙を飲み込む音が聞こえるようだった。

“恋心”の一言が示すもの

鏡を見つめる歌麿の姿が印象的だった。
「次は己の顔でもお描きになるので?」と問われ、「いや、ちょいと恋心をね」と返す。
この一言が、全話通して最も静かで残酷な告白だった。
蔦重の妻・ていへの思いか、それとも蔦重自身への敬愛か。
その曖昧さが、余計に切ない。
高岡早紀さん演じる母・つよがもういない今、誰も彼の痛みを受け止めてくれない。
孤独な恋心が、江戸の夜に溶けていくようで、胸が締め付けられた。

まとめ

第42回は、信頼と愛情の線が少しずつねじれていく回だった。
蔦重(横浜流星さん)の情熱も、歌麿(染谷将太さん)の誇りも、本来は同じ方向を向いていたはず。
でも、時代の波と人の想いが交差するとき、絆が壊れる音がした。
「招かれざる客」は、外から来た万次郎ではなく、歌麿の胸に生まれた“蔦重への想い”そのもの。
愛と芸術の間で揺れるふたりの物語は、まだ終わってほしくないと願わずにいられない。
(ゆめのん)

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