最終話、物語は静かに終わったはずなのに、心の中は全然静まらない。
蔦屋重三郎(横浜流星さん)の人生を見届けたあとに残された、あの後ろ姿。
顔が映らないだけで、こんなにも想像が膨らむなんてずるい。
言葉にされなかった感情が、空気ごと胸に押し寄せてきて、しばらく画面から目を離せなかった。
蔦屋重三郎(横浜流星さん)が辿り着いた場所
写楽絵を世に出し続け、その先も止まらず、本屋として走り続けた蔦重。
和学や長編作品にも手を伸ばす姿は、成功者というより挑戦者の顔だった。
そんな蔦重(横浜流星さん)が、長谷川平蔵宣以(中村隼人さん)に連れられて立ち寄った宿場町の茶屋。
ここで大きな事件が起きるわけじゃないのに、人生の集大成みたいな時間が流れてた。
走り続けた人だからこそ、立ち止まる場面がこんなにも沁みる。
長谷川平蔵宣以(中村隼人さん)の言葉が残した余韻
平蔵(中村隼人さん)が語る「泥沼であっても、時には蓮の花が咲く場所であってほしい」という言葉。
吉原の未来を案じる声が、厳しさと優しさを同時に含んでいた。
蔦重がそれに静かに頷く姿に、二人が見てきた時代の重さが滲む。
ただの会話なのに、これまでの物語全部がこのやり取りに集約されてる感じがした。
映らなかった女将、その後ろ姿の正体
駕籠屋から出てきた女将の後ろ姿。
顔は最後まで映らない。
でも、蔦重(横浜流星さん)と平蔵(中村隼人さん)が見せた表情で、答えはほぼ出てた。
本が好きで、子にも恵まれ、穏やかに暮らしている女性。
そして差し込まれる瀬川との回想。
この流れで「花の井(小芝風花さん)じゃないわけがない」と思わせる構成、静かに心を撃ち抜いてくる。
瀬川(小芝風花さん)が選んだ未来の示し方
蔦重と結ばれる寸前で姿を消した瀬川。
それ以来、消息不明だった存在が、こんな形で描かれるなんて。
顔も声もないのに、「幸せに生きている」と伝わる演出があまりにも粋。
吉原を、女郎たちがいい思い出を持って出ていける場所にしたい。
あの言葉が、ちゃんと未来につながっていたと思うと、涙が止まらない。
蔦重の表情がすべてを語っていた
女将の後ろ姿を見つめる蔦重(横浜流星さん)の顔。
あの一瞬に、後悔も感謝も愛情も全部詰まってた。
言葉にしなくても、再会しなくても、心が通じているのが分かる表情。
幸せそうで、少し切なくて、それでも前を向いている。
あの表情が最終話の答えだった気がする。
まとめ
『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』最終話は、説明しすぎないからこそ深く刺さった。
蔦屋重三郎(横浜流星さん)と花の井(小芝風花さん)の物語は、言葉より余白で締めくくられた。
後ろ姿だけで、ここまで感情を動かす演出は本当にずるい。
幸せでよかったと、素直に思えるラストだった。
見終わったあと、静かに泣いてしまう名シーンが、確かにここにあった。
(ちーず姫)

