ぼくたちん家 第3話 感想文(ネタバレあります)― 秘密の「親子契約」が引き寄せる、奇妙で温かな共同生活の始まり

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「親のフリ、しようと思います」――決断から始まる物語

第3話では、波多野玄一(及川光博)が中学3年生・楠ほたる(白鳥玉季)から突然「卒業までの半年、父親のフリをしてほしい」という契約を持ちかけられ、契約金としての3000万円を預かるという異例の展開が描かれました。ほたるの母・ともえ(麻生久美子)が横領疑いで逃亡中という背景が明らかになり、ほたるの“誰にも頼れない”という切実な思いが形になっていきます。

良かったこと

異色の“偽親子”だからこそ生まれる温かさと緊張感

ほたると玄一が「親子契約」という形で関係をスタートさせたことで、普通の家庭ドラマでは見られない構図が生まれています。母の不在、小学生とは言えない年齢のほたる、そして“ゲイのおじさん”という玄一。設定だけを聞くと奇妙ですが、ほたるの切実さと玄一の優しさが噛み合い、観ていて「ほんの少し救われる瞬間」が随所にありました。また、担任・作田索(手越祐也)がこの関係を「本当の親子」と思い込み、車中泊を始めるあたりから漂うハチャメチャな共同生活の予感も、どこかコミカルで愛おしかったです。

キャラクターのギャップとその魅力

玄一は“心優しきゲイのおじさん”という印象ですが、ほたるという少女の人生を預かろうとする覚悟が、彼の人物像をより深くしていました。そして、ほたるは「母が戻ってくるはず」と信じてアパート暮らしを続ける姿に、強さと脆さの両方を感じます。二人とも“普通ではない状況”に生きているからこそ、普通の幸せを願う声が切実に響いていました。

気になった・もう少しほしかったところ

契約の背景・金銭の事情が幾分抽象的

母が3000万円を横領した疑いで逃亡中という設定はインパクトがありますが、その金銭の動きや契約の法的リスクなどが回想や説明でさらっと流れてしまっていたため、視聴者として「この3000万円は何やねん」というツッコミを抱く場面もありました。もう少しだけ契約に至る過程やほたるの心理を掘ってくれていたら、共感度がもっと上がったと思います。

担任・索の関与が少々唐突に感じる部分も

索が「親子だと思って」玄一とほたるを気にかけ、車中泊を始めるあたり、設定的には面白い反面「なぜそこまで?」という疑問も少し。教師としての立場、匿名ではない立場でこの関係に踏み込む理由や動機がもう少し丁寧に描かれていれば、索というキャラクターの厚みも増したと思います。

感想まとめ

第3話は、「親子でもない者同士が家族のフリを始める」という“偽りの家族”という設定を通して、「居場所を作る」「信じて待つ」「頼ることの難しさ」といったテーマを描いた回でした。玄一とほたるの契約という非日常的な出発点ながら、そこから漂う“ゆるやかな救い”が印象的で、ドラマの温かさを感じられました。
特に印象深かったのは、玄一が朝おにぎりを作って配ろうとする場面。ほたるに「頼んだ時だけでいいです」と断られ、索からも冷たくあしらわれる様子が、彼の“善意”が空回りしてしまう切なさをリアルに映していました。

また、ほたるが進路を考えようと高校のパンフレットとにらめっこし、でもいつものように“トーヨコに足を運んでしまう”場面から、「進路を選ぶ=自分にとっての居場所を選ぶ」というテーマが浮かび上がってきて、単なるホームコメディ以上の重みを感じました。

次回への期待と考察

次回は、ほたるの父・仁(光石研)がアパートに現れて大騒動になるという予告が出ており、この“家族のフリ”がさらに複雑になることが予想されます。仁の目的が何なのか、3000万円とどう繋がっているのか。そして、玄一と索の関係にも変化が生まれる可能性があります。偽りから始まった関係が、果たして本物の“家族”へと変化していくのか、あるいはさらに揺らいでいくのか――そのあたりを注目しています。

このドラマは、「家族とは何か」「居場所とは何か」「誰を信じるか」を問いながら、笑いと人情で描く作品です。第3話はその問いの“始まり”として、良い役割を果たしていたと思います。
(あいちゃん)

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