“感情”に立ち向かう刑事たち
第4話を観て、まず強く心に残ったのは、若手刑事・正木敏志(阿久津仁愛)が抱える「感情が止められない」という悩みが、事件を通じて真摯に描かれていたことです。被害者の主婦・蓮香の死。現場で涙を流していた正木。目撃者でも発見者でもないのに、涙が止まらないというその状態を、同期であり“コーチ”役でもある向井光太郎(唐沢寿明)がどう扱うかに、ドラマとしての深さを感じました。
良かったこと
感情と理性の揺らぎを描いた捜査劇
この話では、捜査一課に配属された益山瞳(倉科カナ)が事件の第一報を受け、向井を呼び出したという流れから、捜査と心理のギャップが浮き彫りになっていました。若手刑事・正木が号泣してしまう理由が、“感情が溢れるから”というだけでなく、その背景にある過去や苦悩が徐々に明かされる演出となっており、単なる捜査物以上の“人”の物語として響きました。
また、向井が正木の涙を「条件付きで活かせる武器になる」と語る場面では、“泣く男”という副題のもとに、「泣いてはいけない刑事像」からの逸脱と再定義が提示されたように思います。
“コーチ”という役割の変化が見えた
これまで若手たちへの教え・指導という立ち位置が強かった向井ですが、第4話では「助っ人として現場に駆けつけるコーチ」という姿も見え、物語の中で少しずつ役割が変化してきたな、という印象を受けました。捜査一課としての第一線に立つ瞳や正木らに対して、向井が“教えるだけ”ではなく“共に問いかける”姿勢を示したことは、シリーズとしての拡張を感じさせました。
気になった・もう少し欲しかった部分
事件の動機・背景の入口が浅く感じられた
被害者・蓮香の殺害事件自体の導入はインパクトがありましたが、殺害に至る経緯や動機がやや未整理で、視聴者として「なぜこの人が」「なぜこのタイミングで」との納得にもうひと押し欲しいと感じました。正木の涙という“感情の引き金”には説得力がありましたが、事件そのものがもう少し深掘りされると、物語としての完成度がさらに上がったと思います。
テンポと感情描写のバランス
物語は感情の揺れを重視していましたが、その分捜査パートや手がかり探しの描写が少し短く感じました。感情の葛藤に比重を置く演出は良いのですが、捜査物としての“発見→展開→解決”というサイクルをもう少しゆったり見たかったという気持ちもあります。
感想まとめ
第4話では、「泣く男」というフレーズが象徴するように、感情を抱える若手刑事の成長と、それを支えるコーチの存在が丁寧に描かれていました。正木が抱える“感情の制御できなさ”は、捜査一課という硬い世界にあって異質に映りますが、だからこそ彼の存在が物語に新鮮さとリアルをもたらしていました。
また、向井が“泣くこと”を否定せず「肝心なことを見失わなければ武器になる」と語った場面は、刑事ドラマの定型を超えたメッセージ性を感じました。
ただ、事件そのものの深さや捜査展開のスピードにもう少しゆとりがあると、より世界観に没入できたとも思います。
今後への期待と考察
次回以降、注目したいのは、正木が自身の感情をどう“制御”もしくは“活かす”か、そして彼を支える向井の“コーチング”がどのよう進化していくかです。また、捜査一課に集められた向井の“門下生たち”が本格的にチームとして動き始める予兆がこの回にありました。その結集が、捜査のスケールをどこまで拡大させるのか期待しています。
このドラマは、“刑事という職務”だけでなく、“刑事である前の人間”を描く作品として魅力を深めています。第4話は、その魅力がより明らかになった回だったと感じました。
(あいちゃん)

