偽りの“ママ契約”が崩れ始めた瞬間
第5話を観てまず衝撃を受けたのは、いろは(池村碧彩)の本当の母親が茉海恵(川栄李奈)であることが明らかになった点です。薫(波瑠)はその事実を知った担任・智也(中村蒼)と再度話し合いを行い、茉海恵・いろは・智也・薫の4人で対話をする場面へと展開。
同時に、企業的視点でも波乱が起こっており、「ごほう美アイス」の売れ行き好調を背景に、竜馬(向井康二)にヘッドハンターからスカウトのメールが届くという誘惑も描かれ、茉海恵と竜馬の関係にも亀裂が入り始めます。また、三ツ橋商事側の慎吾(笠松将)が RAINBOWLAB への敵対心を露わにし、不穏な動きを見せ始めるなど、家庭/仕事/企業という三つどもえの衝突が鮮明になりました。
良かったこと
真実の発覚が持つ重み
いろはの母親が偽ママ契約下の薫ではなく、茉海恵だと判明する展開は、物語の根幹を揺るがす重大な転換点でした。これまで積み上げてきた“偽ママ”という設定の上に成り立っていた関係が、一気にほころびを見せ始め、観ている側にも「この関係、どこまで耐えられるのか?」という緊張を生み出しました。
また、4者面談という形式で、教師・母・娘・偽装者という関係性を可視化させた演出も効果的で、「対面」「告白」「決断」という流れがシーンを引き締めていました。
“仕事”と“家庭”が交錯するリアルさ
竜馬に届いたスカウトのメールは、“家庭・仕事・野心”という三つのテーマを同時に揺さぶる装置として機能していました。茉海恵から頼りにされていないという竜馬の心境の変化が、「偽ママ」契約の陰にある“犠牲”や“我慢”も含んでいることを感じさせ、ただのスキャンダルドラマではなく、現代社会の人間関係を映した作品になっていました。
さらに、企業対立の構図として慎吾がRAINBOWLABに敵対する姿を見せたことで、“偽ママ契約”という家庭内ドラマが、企業戦略や利益というスケールにまで拡がっていることも印象的でした。
気になった・もう少し欲しかった部分
偽ママ契約の倫理的ジレンマが浅めに感じた
偽ママ契約そのものが重いテーマであるだけに、「なぜ薫はこの契約を引き受けたのか」「茉海恵はどうこの選択に至ったのか」という動機部分を、もう少し丁寧に掘り下げてほしかったと感じます。物語が進む速度を考えると、契約からここに至るまでの葛藤や選択にもう少し“心の声”があっても良かったのではと。
例えば、いろは自身がどんな思いを抱えてきたか、偽装に気づかずにいた日常の“罪悪感”や“違和感”の描写がもう少し深まっていると、登場人物それぞれの“当事者感”が増したと思います。
企業戦略パートの導入が急だった
慎吾・三ツ橋商事・RAINBOWLABの対立という構図が登場したのは興味深かったのですが、その背景説明がやや唐突で、「何が目的なのか」「どういう力関係なのか」が視聴者にはまだ整理しづらいまま進行した印象があります。
“偽ママ”のテーマと企業スキャンダルが並走する展開は魅力的ですが、両者の接点や絡ませ方がもう少し繊細であれば、物語のテンションがさらに高まったと感じました。
感想まとめ
第5話では、偽ママ契約という異質な家庭のカタチが、いよいよ“割れ目”を迎えたと感じました。母・娘・教師・契約者という四者が一堂に会し、真実に向き合う場面は、物語の中でも最もリアルで緊張感のある瞬間でした。
また、家庭ドラマだけでなく、仕事・野心・企業の抗争という外側の世界が反映されていることで、「偽ママ」という設定がただの奇抜なアイデアではなく、社会とリンクしたテーマとして機能している点に好感を持ちました。
しかしながら、動機の掘り下げや企業パートの整理がもう一歩という点もあり、私としては「もっとこの後の展開で、人物の深いところまで覗いてみたい」と思いました。
今後への期待と考察
次回以降、まず注目したいのは、いろはがこの真実をどう受け止めるか、そして茉海恵と薫の“偽ママ契約”が今後どう揺らぐかです。また、竜馬が仕事の誘いを受けてどのような選択をするか、そして企業抗争の中で慎吾がどんな策を講じるか、これらが交錯していくことで物語のスケールがさらに拡大しそうです。
このドラマは、“母親とは何か”“家族とは何か”“キャリアと家庭の両立とは”という問いを、フィクションながらも私たちの日常の延長線上に置いてくれています。第5話は、その問いがより切実になった回だったと感じました。
(あいちゃん)

