釣り堀での出会いと心の揺らぎ
第3回では、ヒロト(岡山天音)がバイトしている釣り堀に、立花よもぎ(吉岡里帆)が訪れるところから物語が動き出します。よもぎが釣りながらも仕事の電話をかけ続けている姿をヒロトが気にかけるなか、彼のある言動がよもぎを怒らせてしまう――その瞬間、「気になる人」と「気を使う人」の微妙な距離感が浮かび上がりました。
その後、落ち込むヒロトの元に親友・ヒデキ(吉村界人)が良い肉を持って現れ、平屋の縁側で焼き肉をするという場面に移ります。せっかくの和やかな時間なのに、なつみ(森七菜)は不機嫌そうに部屋にこもっていて、“同じ屋根の下”でさえうまく交われていない人たちの存在が胸に引っかかりました。
良かったこと
日常のゆるさに潜む“不安”の描写が巧み
釣り堀という比較的ゆったりした空間でのよもぎの“釣りつつ仕事”というギャップが、ヒロトにとって“気になる相手”以上のものを感じさせます。彼女の“仕事でも私生活でもない”態度に、ヒロトが抱く遠慮と関心がそっと描かれていたのが良かったです。
そして、平屋の縁側で焼き肉という一見温かいシーンでありながら、なつみがこもっているという“同じ場所なのに通じていない”構図が、物語の奥行きを増していました。
キャラクターの“距離”と“存在感”が鮮明に映る
ヒロトの「よもぎを気にしていたけど、思わず出た言動が裏目に出る」瞬間、彼がただ“気になる人”というよりも“どう関わればいいかわからない人”ということが伝わってきます。
また、よもぎの“釣り+電話”という行動は彼女が“自由”であると同時に“自分の時間ではない”という複雑さを秘めていて、彼女自身の立ち位置にも興味が湧きました。
気になった・もう少し掘ってほしかった部分
なつみの内面変化の描写がもう少しあれば…
なつみが不機嫌で部屋にこもるという設定は視聴者にも「何かあるな」と思わせるものの、具体的に“何が引っかかっているのか”の説明がやや控えめでした。彼女の“いとこ/同居人”という立場がもう少し掘り下げられていれば、物語に更に厚みが出たと思います。
ヒロトの“言動”がなぜ裏目に出たかの理由が少しぼやけていた
ヒロトのある言動がよもぎを怒らせてしまうという展開は効果的でしたが、「なぜその言動がよもぎを怒らせたのか」「ヒロトがその結果をどう受け止めたか」の描写がもう少し丁寧だと、彼自身の成長や反省のプロセスがより共感できたかなと思います。
感想まとめ
第3回は、ゆるやかな日常の中に漂う“他者との距離”と“関わりたいけれどどうすればいいかわからない”という感情が、静かに、しかし確かに存在していました。
ヒロトとよもぎ、なつみという三人の関係性が“平屋”“釣り堀”“焼き肉”という日常の舞台を通じて、少しずつ動き始めているのが感じられました。
このドラマの魅力は、大きな事件や派手なドラマティック展開ではなく、「日常の隙間」にこそある揺れや、選べない関係性を丁寧に描いているところにあると思います。
今後への期待と考察
次回以降、特に注目したいのは、よもぎがなぜ釣り堀に現れたのか、そしてヒロトが彼女の“忙しさ”や“距離感”にどう向き合うかです。
また、なつみが部屋にこもったままで終わったこの回を受けて、彼女の内面や“上京した18歳のいとこ”という立場がどう描かれていくかも気になります。
私は、このドラマが「誰かを支えたい/でも支えられたい」という矛盾を抱えた人々を描いていて、第3回はその矛盾がほんの少し動き出した瞬間として、とても良かったと思います。
(あいちゃん)

