「推しを守りたい」と「推しに恋してしまった」——
この二つの感情がぶつかり合った時、人はどう壊れていくのか。
第2話は、橋本将生さん演じる巧巳の心が静かに軋み、
“推し”への想いが愛と狂気の狭間に落ちていく回だった。
澪(恒松祐里)の“もう一つの顔”と、崩れ始める現実
澪の中に別人格・眞希がいるという事実。
それを知ってしまった巧巳の戸惑いが、
第2話ではさらに深まっていく。
澪(=MIO)はアイドルとしての完璧な笑顔の裏に、
“記憶が抜ける”という断絶を抱えていた。
恒松祐里さんの演技は、透明感の中に微かな闇があって、
まるでガラスのような危うさ。
澪の「私、自分で自分のことがわからないの」というセリフ、
その言葉の空虚さが心に刺さる。
そして、橋本将生さん演じる巧巳は、
その“壊れかけた存在”をどうにか抱きしめようとする。
推しであり、愛する人であり、同時に「共犯者」になっていく相手。
この矛盾の中で、彼の現実感が少しずつ溶けていくのが恐ろしい。
「推しの恋愛話」——ただの会話なのに心臓を刺す瞬間
踏切のシーンは、第2話の最大のクライマックスだった。
ふらつく澪を抱き起こした巧巳に向けて、
澪が海斗(浅野竣哉さん)との過去を語る。
「彼、最初は優しかったの…なのに…」
その声の震えに、巧巳の表情がゆっくりと沈んでいく。
“死んだ恋人”という言葉よりも、
“推しが誰かを愛していた”という現実のほうが、彼には刺さる。
SNSで話題になった「巧巳の悲しい顔」、
あの一瞬に、橋本将生さんの演技の真価が詰まっていた。
泣きもしない、怒りもしない。
ただ、視線の奥に“壊れた静けさ”があった。
それが、愛の終わりではなく“共犯の始まり”であることを示していた。
逃避ラブサスペンスとしての完成度
テレ東深夜ドラマらしい、淡い光と影のコントラスト。
祖父の家という閉ざされた空間、
外の線路、朝の光。
その中で繰り返される「嘘」と「告白」が、
まるで夢の中のような質感で描かれていた。
「ここには一人で来ました」と嘘をつく巧巳の声の震えに、
彼の“推しを守る”決意と、“自分を捨てる”覚悟が見えた。
恒松祐里の“二重人格演技”が圧巻
澪と眞希——人格が変わるたびに、
恒松祐里さんの声のトーンや目線が一瞬で変わる。
眞希のときはどこか冷たく、理性的で、
澪のときは儚く、守ってあげたくなる脆さがある。
同じ顔で別の人間を演じるという難役を、
自然体で成立させているのが見事だった。
まとめ
第2話は、“恋する推し活”から“共犯関係”への転落点。
踏切で交わされたあの会話は、
澪の“罪”と巧巳の“覚悟”をつなぐ瞬間だった。
橋本将生さんの繊細な表情の変化、
恒松祐里さんの二重人格の芝居。
どちらも、深夜ドラマの域を軽々と超えていた。
「彼女を守るために、彼はどこまで堕ちるのか」——
次回から、共犯の物語が本格的に始まる。
(あやぴょん)