ひと夏の共犯者 第6話 感想文(ネタバレがあります)― 「別人格」が語る真実と、共犯の道が交差する刻

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もう一人の「澪」が動き出す

第6話を観てまず印象に残ったのは、恒松祐里演じる澪の中にいる、もう一つの人格“眞希”がついにその口を開き、澪の壮絶な過去を語り始めたことです。眞希の「やり残したこと」を代わりに実行しようと、主人公・巧巳(橋本将生)が一人で東京へ向かうと決意する展開も、逃避行ラブサスペンスとしての緊張を一気に高めていました。公式あらすじによれば、刑事たちが澪の通っていた施設を訪ね、AMELのメンバー・愛衣那(永瀬莉子)も同じ施設出身だったことが判明する場面もあり、事件の背景が大きく動き出しています。

良かったこと

過去と人格の交錯が深まる構造

澪=眞希という多重人格あるいはもう一人の自己という設定が、この回で確実に動き始めました。眞希が「私を無意識に生み出したのは澪だ」と語る場面は、観ていてぞくっとするほど強烈で、これまでの“推しアイドルを守りたい”という巧巳の動機に、新たな“守るべき者”と“証明すべき真実”が加わったことがわかります。青春ラブサスペンスという枠を超えた心理的なスリルがここにありました。

捜査側の動きが物語に厚みを与える

逃避行・恋愛・秘密という3つの軸だけでなく、刑事・塔堂(萩原聖人)と三宅(柾木玲弥)が、児童養護施設という澪のルーツに迫るシーンが挿入されたことで、単なる私小説的ドラマではなく、社会的背景も含んだ物語としての重みが加わりました。アイドルが通っていた施設という“過去”が、現在の事件とどうリンクするのかという謎が視聴者に向けて明確に提示されたのも好印象です。

気になった・もう少し欲しかった部分

眞希=澪の関係の説明がもう少し欲しかった

眞希という人格の登場自体は強烈でしたが、「なぜこの瞬間にその人格が語り始めるのか」「その人格がやり残した“こと”とは何か」がまだ若干ぼやけて感じられました。いきなり感情の重みと謎を提示される展開には引き込まれましたが、視聴者としては「もう少しだけ説明や背景が整理されていれば」という期待もありました。

巧巳の決断にもう少し葛藤の描写を…

巧巳が「一人で東京へ向かおう」と決意する場面は物語を動かすきっかけとして機能しましたが、その心の揺れやためらいが少し駆け足に感じられました。推しへの愛、自分自身の責任、そして眞希/澪という複雑な関係性――これらが折り重なる決断だけに、もう少し“ためらい”や“覚悟を固める瞬間”を丁寧に見せて欲しかったと思います。

感想まとめ

第6話では、澪というアイドルの“表”と“裏”、眞希という人格の揺れ動く意志、そして巧巳という男の“守るべきもの”への覚悟が並行して描かれ、物語の厚みが増したと感じました。恋愛逃避行の枠に留まらず、「人格の闇」「過去からの逃亡」「誰が共犯者か」という問いがより鮮明になってきた回です。
ただ、重要な謎が明らかになってきた反面、「なぜ今」「どのようにして」という部分で想像の余白が残っており、次回への期待値も確実に上昇しました。

今後への期待と考察

次回以降、特に注目したいのは、眞希がやり残した“こと”とは何か、そしてそれを巧巳がどう引き受けるのかという点です。また、愛衣那という同じ施設出身のメンバーの存在と音信不通という伏線が、物語の核心を揺るがす鍵になりそうです。
このドラマは、アイドル×ファンというシンプルな構図ではなく、「誰を守るか」「何を守りたいか」「そして、どこまで手を汚してもいいのか」という共犯の倫理を問いかけています。第6話は、その問いが一段と深まった回だったと感じました。
(あいちゃん)