地獄は善意で出来ている 第4話 感想文(ネタバレがあります)― “本当の罪”が静かに叫ぶ夜、告白と赦しの交差点

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煙の奥に隠れていた真実

第4話を観てまず衝撃を受けたのは、火が燃え上がる直前の物置小屋という閉ざされた空間での〈救出〉と〈疑惑〉が同時に描かれていたところです。樹(草川拓弥)と理子(渡邉美穂)が琥太郎(高野洸)に助け出されるという劇的な展開。しかし、そもそもその小屋に二人を閉じ込めたのは翔太(吉田健悟)だと判明し、彼は「偶然だ」「自分は火をつけていない」と言い張ります。理子が樹に抱く不満を吐露したことによって、翔太は「彼が半グレ集団のメンバーだった」と告げ、場の雰囲気は一気に変容します。
さらに“罪を告白する”という被更生プログラム的な場面で、翔太が「罪状は窃盗だけど、本当の罪は殺人だと思ってる」と口にする瞬間は、ドラマのトーンを一段ギアアップさせました。そして、被害者遺族のひとり・栞(木下晴香)が現れ、復讐を決意していたという胸のうちが明らかになるラスト。
「善意」や「更生」という言葉の裏に潜む冷たい構造、それを促す第三者(カトウ/細田善彦)の存在……この回は、まさにその幻想を解体し始める場でした。

良かったこと

告白という形式を利用した“罪の可視化”

翔太が自らの過去を語る場面が非常に印象的でした。金持ちの高齢者宅を狙った空き巣の指示役であったという自覚、そしてその作業を通じて誰かの命を奪ったという現実――「なぜ自分だけ軽い罪だったのか」という問い。
この告白の場を、ドラマは演出として極めて静かに、しかし確実に描いていて、「罪を語れば救われるのか?」という問いを視聴者に投げかけてきます。

関係性のほころびが精密に描かれた

物置小屋に閉じ込められるという事件を起点に、メンバー間の“信頼”が簡単に揺らぐ様子が丁寧です。理子が樹を快く思っていない事実を吐露する場面、翔太がそれを引き金に自分の疑念を爆発させる流れ、そしてそれを見守っていたカトウの冷たい視線――それぞれのキャラクターの“本音”が少しずつ露わになっていく過程が、物語を重厚にしています。

気になった・もう少し欲しかった部分

栞の陰影があと一歩欲しかった

被害者遺族としての栞が登場し、「復讐を決意していた」という告白は強烈でした。ただ、彼女の内面や“復讐を止めようか迷う”揺れ動く気持ちが、もう少しだけ映像的に丁寧に描かれていたら、視聴者としてより深く彼女に寄り添えたように思います。

更生プログラムと“善意”の構図にもう少し緊張を

「罪を打ち明ける」という設定そのものは興味深かったものの、その場が少し“形式化”されて感じられる瞬間がありました。告白→更生という図式が早期に提示されすぎたため、“本当に何が救済で、何が制裁なのか?”という問いの重みがもう少しずっしり来てほしいと感じました。

感想まとめ

第4話は、救出劇の裏側にあった“罪”と“隠蔽”を浮き彫りにし、「善意でできている」というタイトルの皮肉性を非常に強く実感させる回でした。
「本当の罪は殺人だ」という告白、「復讐を果たすかどうか迷う遺族」、そして“罪を語ることで救われようとする者”――それぞれの立場が互いに映しあい、やり場のない重みを持って交錯していました。
また、火災という事件が、ただの事故ではなく、人と人との関係性が爆発した“きっかけ”だったという視座を与えてくれたことも、物語の深さを増していると思います。

今後への期待と考察

これから特に注目したいのは、以下のポイントです:
– 翔太の「殺人だと思っている」という自覚が、今後どう作用していくのか。彼は償うことができるのか、それともさらに自らを追い込んでいくのか。
– 栞が“復讐”という目的に対して揺れを見せた背景とは?彼女は被害者遺族であると同時に、“人間を許す”という問いに直面しているように見えます。
– カトウという存在。更生プログラムを促す立場にあるはずなのに、彼の“ほくそ笑む”ような視線や主導性が、何を意味しているのか――善意の裏にある動機は何か?
このドラマがただ「罪を犯した者を裁く/救う」という構図にとどまらず、「誰が善意を語り、誰がその善意を利用するのか」という深い問いを投げかけていることを改めて感じました。第4話は、その問いがより鮮明になった、重要な転換点だったと思います。

(あいちゃん)