序盤から揺さぶられる構図
第4話を観てまず強く感じたのは、“取調室”という舞台を使って、物語の根底にある「正義」「曖昧さ」「観察する者とされる者」の境界が揺らいでいるということです。主人公・真壁有希子(天海祐希)が率いる「キントリ(緊急事案対応取調班)」が、女性死刑囚・佐藤礼奈(大原櫻子)を相手に取調べに着手するところから、物語は一気に緊迫の様相を呈します。
礼奈の「もう一人殺したのを思い出した」という告白が導火線となり、弁護士・清原美香(高岡早紀)が立会いを要求する場面では、「取調べとは何か」「被疑者の人権とは何か」という問いが前面に出てきました。
良かったこと
取調室のリアリティとキャラクターの揺れ動き
取調室という密室・時間制限付き・観察と駆け引きの場。そんな設定が、今回もビジュアルと心理の両面で強く機能していました。礼奈が無邪気な笑顔を見せる一方で、ワンピースの黒いフリルという服装で現れるギャップが印象的。彼女の姿そのものが「何を隠しているか分からない」怖さを増幅していました。
また、有希子や玉垣松夫(塚地武雅)が制限時間に追われて焦る様子、「のらりくらり」とする礼奈に翻弄される姿など、キャラクターのブレや揺れがリアルで見応えがありました。
告白→証拠発見という流れの重さ
「アキヤマという歯科医をダムに突き落とした」という礼奈の供述が、やがて白骨遺体の一部発見という事実に繋がる流れは、観ていて背筋がゾクッとしました。取調べという“言葉”の世界が、地中の“証拠”につながる――その橋渡しが劇的に描かれていたのが印象的です。
この回では「言葉=真実」ではなく、「言葉+証拠+観察」がキーになっており、取調室ものとしての深みが出ていたと思います。
気になった・もう少し欲しかった部分
被疑者・礼奈の動機描写がやや浅かった
礼奈の衝撃的な告白や言動のインパクトは強かったものの、「なぜ彼女がもう1件を思い出したのか」「そのもう一人殺害という行為に至るまでの心の流れ」がもう少し丁寧だと、さらに説得力が増したと思います。
被疑者側の人間ドラマを掘るのはこのドラマの魅力のひとつなので、次回以降にその“過程”が補足されることを期待します。
弁護士との緊張関係が少し平坦に感じた
清原弁護士が取調べの立会いを強く主張し、有希子たちがそれを拒む構図は興味深かったのですが、もう少しこの対立の背景(法的・倫理的・人的)を描いてほしかったという思いがあります。双方の主張と立場のぶつかりあいが、もっと厚く描かれれば、ドラマとしての“取調べとは?”というテーマがさらに深まったのではないでしょうか。
感想まとめ
第4話は、まさに「取調室」の概念を揺さぶる回だったと感じました。被疑者が“もう一人殺した”と語る瞬間、観ている側も「本当か?」と疑い、あるいは「恐ろしい」と思わされます。言葉と行動、観察者と被観察者、正義と疑念――その境界がぼやける瞬間こそ、このドラマの強みだと思います。
有希子たちキントリの“常識”が通用しない相手と向き合う姿は、これまで以上に刃物のように鋭く、痛々しく感じられました。
同時に、取調べの勝負がどうなるのか、真実がどこにあるのかという緊張感も高まり、次回以降の展開に胸が高鳴ります。
今後への期待と考察
これから注目したいのは、礼奈の“もう一人殺した”という告白が本当に真実なのか、それとも何らかの心理的駆け引きなのか、という点です。
また、有希子と清原弁護士という正義・法・倫理を代表する双方のぶつかり合いが、どう決着するのか――“取調室”という場が、制度的な枠を超えて人間の心理を浮かび上がらせる舞台になっているところに注目です。
このドラマは、ただ「犯人をあぶり出す」だけではなく、「人間を見つめる」「社会を見つめる」という側面も併せ持っており、第4話はその両面がぐっと前に出てきた、見逃せない回だったと思いました。
(あいちゃん)

