“任務交代”が象徴する変化の予兆
第32話を観てまず強く印象に残ったのは、岩本照演じる北沢辰之助が、これまで主導してきた警護任務から一歩引き、代わって成海璃子演じる三雲千早が警護指揮を握るという展開です。辰之助が五十嵐聖(大地伸永)の警護から外れ、小学生・高宮杏(小井圡菫玲)の“1日警護”という全く別の仕事を任されることで、「守るべき対象」の重要性や「守る姿勢」の意味が改めて浮かび上がりました。
良かったこと
警護という職務を通して見える“守る者”の孤独と覚悟
辰之助が「俺が主役じゃなくてもいいのか」というような迷いを抱えている場面が切なかったです。相手が“真犯人の可能性のある対象”であった五十嵐を千早に託し、自分は別任務へと移ることで、「守る」という行為が必ずしも主役の立場ではないという痛みが描かれました。1日警護の杏が“移動中も勉強”というハードな日常を送っている小学生という意外な対象であったことで、守る側の緊張と責任が逆転しているように感じられました。
人間関係の緊張が増すドラマ構造
千早が警護の指揮を取りたがったのは、「辰之助のやり方では不十分だ」という判断から。これは単なる能力の差というよりも、信頼・経験・価値観の違いが浮き彫りになった瞬間です。辰之助と千早、そして里夏(白石麻衣)という三角の関係にもわずかな亀裂が入り始め、視聴者としてはその一瞬一瞬が“次に何が崩れるか”という予感を呼びました。
気になった・もう少し欲しかった部分
五十嵐の“真犯人らしさ”の提示がやや曖昧
ドラマ冒頭で五十嵐の逃走、千早がGPSを仕込んで居場所を突き止めるなど緊迫の展開がありましたが、「なぜ彼が真犯人の可能性を持つのか」の背景説明がもう少し丁寧だと、警護対象としての“危うさ”がより際立ったと思います。視聴者としては「信じてはならない人物を守る」という逆説的な守護のテーマが好きなので、もう少し動機や過去の伏線が見えれば尚良かったです。
杏の警護シーンが軽く感じられる瞬間も
小学生・杏を警護するという設定は新鮮で面白かったのですが、学習・移動・習い事という日常の切り取りがゆえに、“殺人事件の警護”という重大な任務と比べると緊張感がやや低かったように思います。もちろん「守る対象の異質さ」を見せる意図は理解できますが、任務としての緊迫感をもう一段階高めてほしかったという印象があります。
感想まとめ
この第32話では、「誰を守るのか」「誰に守られているのか」という視点が、主題としてぐっと浮上しました。辰之助が自分の役割を見直し、千早が責任を引き受ける姿はまさに“警護チームの転換点”だと感じました。守る対象が変わることで“守るべき人”も“守るべき理由”も変わる。そこにあるのは技術だけではなく、人間としての信頼・過去・そして未来への覚悟です。
また、恋愛要素として、里夏が辰之助に不機嫌になる描写には、「仕事には関係ないと思っていた感情」が表に出た瞬間だと感じます。警護任務―という硬質な世界の中で、ヒューマンな“揺れ”が見えたのが個人的には非常に良かったと思います。
今後への期待と考察
次回以降、私が特に注目しているポイントは以下の通りです:
– 千早が五十嵐警護の指揮を取る中で、彼女の指導スタイル・判断基準がどう明らかになるか。
– 辰之助が杏警護を通じてどんな“守る意味”を再発見するか。
– 里夏が不機嫌になった理由、そしてそれが警護チームの人間関係にどう影響を及ぼすか。
– 五十嵐の過去・逃走の真相が少しずつ明らかになることで、千早・辰之助・里夏それぞれの立場がどう揺らぐか。
このドラマは、アクションや恋愛だけではなく、「守る」という行為の裏にある“責任”と“選択”を丁寧に描いてくれています。第32話はそのテーマがより明確になった回だったと思います。次回も楽しみにしています。
(あいちゃん)

