第11話、終わったあともしばらく席を立てなかった。
ハッピーエンドって言い切れないのに、不思議と心は冷えなくて、むしろあたたかい。
久部三成(菅田将暉さん)が全力で走り続けた物語が、少し立ち止まる場所にたどり着いた感じ。
演劇の話なのに、人生そのものを見せられてた気分になる最終話だった。
久部三成(菅田将暉さん)の熱意が生んだものと壊したもの
久部は、才能よりもまず熱意で前に進む人だった。
WS劇場の支配人になり、「ハムレット」を立ち上げたときの目は、本気そのもの。
でも、その熱が強すぎて、周りが見えなくなっていったのも事実。
絵を汚した罪をなすりつけたり、金の使い道をごまかしたり、少しずつ線を越えていく。
応援したくなる主人公だからこそ、暴走していく姿が苦しかった。
予言が現実になる展開の怖さ
無料案内所にいるおばば(菊地凛子さん)の言葉が、じわじわ効いてくる構成がすごい。
「お前の足を引っ張るのは、おとこから生まれたおとこ」。
その一言が、ずっと頭の片隅に残る。
蓬莱省吾(神木隆之介さん)が母の名前を明かした瞬間、点と点がつながる感じ。
運命っぽさがあるのに、どこか人間臭いのがこのドラマらしい。
仲間を失って気づく、演劇の本質
劇団クベシアターは、結局解散。
リカ(倖田リカ/二階堂ふみさん)にも去られ、残ったのは静かな劇場。
ジェシー(シルビア・グラブさん)の言葉、「仲間の信頼を失ったら、あとは落ちるだけ」が重い。
演劇は一人じゃできない。
その当たり前を、久部は一番遅く理解したんだと思う。
樹里(浜辺美波さん)のシェイクスピア解釈が救いになる
久部に語られた、樹里のシェイクスピアの話がとてもやさしい。
下手な役者にも役を与えるための戯曲。
だから悲劇でも温かい、という視点。
この言葉で、今までの物語全部が包み直された気がした。
このドラマ自体が、その考え方で作られてたんだと思う。
2年後のエピローグが残した光
2年後、それぞれが別の場所で生きている。
蓬莱はテレビの世界へ、リカは芸能活動へ。
おばばはクレープ屋。
そして久部は弁当配達。
でも最後に集まって稽古している、かつての仲間たちの姿がすべてを肯定してくれる。
「ノーシェイクスピア、ノーライフ!」に込められた再出発
渋谷の街を自転車で走りながら叫ぶ久部の姿。
成功してなくても、舞台に立ってなくても、演劇は消えてない。
久部の人生から、ちゃんと続いている。
「終わりよければ、すべてよし」というエピグラフが、ここで効いてくる。
途中で転んでも、物語は終わらない。
まとめ
第11話は、夢が壊れる話であり、夢が形を変えて残る話だった。
久部三成(菅田将暉さん)の不器用さも、間違いも、全部含めて人間らしい。
群像劇として、それぞれの今をちゃんと描いたのが美しかった。
演劇に救われた人たちの物語が、演劇そのもので終わるラスト。
静かだけど、長く心に残る最終回だった。
(ゆめのん)

