10年の同志関係と2ヶ月の婚姻―どちらが“認められる”のか?
“同性婚が叶わぬなら…裏切りの異性と結婚”という第7話のキャッチコピーが示す通り、10年間ともに暮らし、同性パートナーとしての将来を夢見てきた愛理(北野瑠華)と祐希(樋井明日香)の関係が根底から揺さぶられる回でした。
祐希が幼なじみの男性と婚姻届を出してしまう、その事実だけでも衝撃的ですが、背景に「余命わずかな祖母を安心させるため」という理由が提示されていることで、単なる“裏切り”以上の問いが立ち上がります。愛理は、「10年間の事実婚が、婚姻2ヶ月に優るのか?」と初(前田公輝)と海(水沢林太郎)に問いかけ、視聴者も一緒に“法/感情/普通”の狭間に立たされました。
良かったこと
法的な“普通”を超える人間の葛藤
この回で特に印象的だったのは、「普通」という言葉の重さです。ドラマ公式も「普通という言葉が鍵」という言葉を用いています。血縁・婚姻・事実婚・同性パートナー…これらが交錯する中で、「どれが普通か」「誰が普通を決めるか」という問いが浮かび上がりました。
10年という時間を積み重ねてきた愛理と祐希の関係を前に、法的には認められないという壁がありながら、愛理が声を上げる姿、そして初と海がその声に向き合おうとする姿は、非常に力強く感じられました。
複数の“家族の形”が描かれている
祐希の婚姻だけでなく、初の姉・楓(入山法子)とその夫・尾張(竹財輝之助)の離婚・親権争いも同時に描かれており、「家族」という言葉が一義ではないことが伝わってきます。血がつながっていても関係が揺らぐ、逆につながりがなくても信頼が生まれる。ドラマがそうした多様な配置を持っている点で、リアルな“家族”の感じがありました。
気になった・もう少し欲しかった部分
祐希の“なぜ”がもう少し掘ってほしかった
祐希が“幼なじみの男性と婚姻届を出した”という展開は衝撃でしたが、その決断に至る心の経緯や、愛理を“裏切る”までの内面が少し薄く感じられました。「祖母を安心させるため」という説明はあるものの、愛理との関係と意味合いをもっとじっくり見せてほしかったです。視聴者として、祐希という人物の揺れや迷いをもう少し理解したかったという気持ちがあります。
初・海コンビへの影響がもう少し描かれていれば更に良かった
愛理を支えるために立ち上がる初と海の姿は良かったですが、彼ら自身の関係性や“同性婚が認められない”という制度的な問題が、彼らにとってどんな意味を持つのかという点がもう少し深掘りされても良かったと思います。依頼人を助けるという立場を超えて、自分たちの生き方とも重ねているだけに、その内的な動揺や覚悟がもう一段階出てほしかったです。
感想まとめ
第7話は、法的な婚姻制度と、人間が築く時間・絆・信頼とのギャップをあらためて浮き彫りにした回でした。愛理と祐希というパートナーが、10年という長さで培ったものを前に、制度という枠が無力であるかのように立ちはだかる。そこに“裏切り”という言葉が加わることで、痛みも大きくなりました。
ただ、この痛みの中にこそ、「普通って誰のための言葉なのか」「認められないけれど確かにある関係とは何か」という問いが存在しており、ドラマが単なるラブストーリーや離婚劇に留まらず、現代社会の“家族とは何か”に切り込んでいることを感じさせます。
今後への期待と考察
次回以降で注目したいのは、愛理の主張がどこまで法廷/世論/制度に影響を与えるか、そして祐希が出した結婚が“本当に安心”を祖母に与えるのか、またその代償として何を失っているのかという点です。
さらに、初と海のコンビが今後どのように制度的な壁と向き合い、彼ら自身の価値観を揺さぶられていくのかも楽しみです。
このドラマは、誰かの“別れ”が終わりではなく、新たな“生き方”の始まりとなることを描いており、第7話はその始まりを強く印象付ける回だったと思います。
(あいちゃん)

