おいしい離婚届けます 第6話 感想文(ネタバレがあります)― 裏切りのその先にある “本当の愛”とは何か

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夫が抱えた“妻を手放したくない”という狂おしい願い

第6話では、妻・涼子(中島亜梨沙)の不倫現場の写真を手に、夫である所(平原テツ)が探偵・海(水沢林太郎)を訪ね、「妻と不倫相手を別れさせて欲しい」と懇願する場面から物語が動き出します。
夫が手にした“証拠”は、不倫という明確な裏切りを示しているはずだったのに、調査が進むほどに妻の本性や隠された動機が不透明になっていき、「これは単なる不倫じゃない」という重い空気が漂ってきます。
その上で、「鎌倉」というキーとなる場所、施設への侵入といった危険な行動が挟まれることで、“離婚”という言葉の向こう側にある「誰を信じるか」「誰に縛られていたか」が浮き彫りになっていきました。

良かったこと

不倫という枠を越えた“複雑な愛情”の描写

この回では、「妻の不倫=単純な浮気」では終わらない構造が描かれていたのが非常に良かったです。涼子が不倫相手・榎本(萬浪大輔)と接点を持った理由、その背後にある“切なさ”や“赦されたい気持ち”がちらつくことで、視聴者としても「誰が被害者なのか/誰が加害者なのか」が一筋縄ではいかなくなりました。
夫・所の「妻を返してほしい」という言葉も、その裏には「この妻しかいない」という執着と、「この妻では満たされない」という焦燥が混在していて、単なる“捨てられた男の悲哀”には留まりませんでした。

弁護士・初(前田公輝)の“普通”を問いかける役割が光る

探偵・海と弁護士・初がタッグを組んで関わるこのドラマにおいて、初の弁護士としての動きがこの回でもドラマを牽引していました。特に、「依頼者のためには手段を選ばない」という初の過激な弁護活動が弁護士会の検討会議の対象となるという展開が、法的・倫理的な問題を真正面から提示していた点も評価できます。
“法律のプロ”という立場で「何を守るのか」「誰を守るのか」という初の苦悩が見えて、物語に重みを加えていました。

気になった・もう少し掘り下げてほしかった部分

涼子と榎本の関係への説明がやや駆け足

涼子と榎本がたどり着いた「鎌倉」「施設への侵入」「手がかり」という流れは緊張感が高かったものの、その前段階の“なぜそこまで走るのか”という動機や背景がもう少し丁寧だと、より感情移入できたと感じます。
例えば、涼子がなぜ不倫相手を持ち、その関係にこだわるのか、夫との日常で何を失っていたのか、という描写がもう少し厚ければ、彼女の「本性」と言われる部分に説得力が出たかなと思います。

探偵・海の立ち位置のもう一段の深化が欲しい

海はこの回でも重要な探偵パートを担っていましたが、探偵として・人間として海がこの案件にどう向き合っているか、という心理的な描写が控えめだった印象です。
“調査する側”の葛藤や“被調査対象”との距離感について、読者としてもう少し内面が見えたら、この“離婚相談ミステリー”としての魅力がさらに引き立ったと思います。

感想まとめ

第6話は、「別れたい妻」と「別れたくない夫」という見出しが示す以上に、「人はなぜ他の人を選び、なぜ他の人によって選ばれるのか」を真正面から問いかけてきました。
妻・涼子が抱える秘密、夫・所の執着、弁護士・初と探偵・海が交錯する法と感情の網、それぞれが“離婚”という言葉の奥にある“愛”や“信頼の崩れ”を映し出していました。
そしてラストに向けて「誰が離婚を望んでいるのか」「どこに帰るべきか」という問いが残り、視聴者としても次回以降の展開を待たざるを得ない引きになっていました。

今後への期待と考察

次回以降(以降=第7話以降)期待したいのは、涼子と榎本の過去関係の真実、そして所が“別れたくない”と願う理由のさらなる深掘りです。
また、初の弁護士活動が弁護士会でどのように評価され、海と組んだ“離婚代理”という枠が今後どう変化していくかも注目です。
私としては、「離婚=終わり」ではなく、「離婚を通じて本当の自分と向き合う始まり」であるというメッセージが、このドラマの根幹にあると感じています。
第6話は、そのメッセージをあらためてあからさまにした、非常に印象深い回でした。
(あいちゃん)