波風立つ朝と、逃げたくなる昼のツーリング
第6話では、母・真希がハワイにいることもあって孤独を抱える愛梨(棚橋乃望)が朝ごはんを拒否し、父・千石哲(松島聡)はつい感情を爆発させてしまいます。朝食をめぐる「勝手にしろ!」という言葉は、ただの怒りではない、疲れと不安と自己嫌悪の交錯を映していて、「父親もまた、人として追い詰められているのだな」と感じさせられました。
千石は、自己嫌悪を抱えて臨時休診にし、気分転換のつもりでバイクで山へ向かいます。ところが、結果としてスマホの充電切れ、バイクのガス欠というアクシデントに見舞われ、文字通り“山中で立ち往生”してしまいます。この“逃げるつもりが、逃げられない”という構図がとても切なかったです。
良かったこと
父と娘のすれ違いと、ほんのひと言の重さ
愛梨の「おやじが帰ってこないのは自分のわがままのせいでは…」という心配の言葉が、千石の胸にずしりと響いていました。親子の関係の中で、「怒る=暴力」ではない、“言葉を放ったあとの後悔”が丁寧に描かれていたのが良かったです。
また、晴海昌弘(白洲迅)が愛梨を励ますために千石が初めて自分に作ってくれた“焼きそば”を作り、過去の思い出を語る場面には、家族/父親像を超えて“男の友情”“ルームシェア相手としての絆”という広がりを感じました。
千石と晴海の“ルームシェア”の起点が明らかに
これまで謎のままだった、千石と晴海がなぜ一緒に暮らしているのかという関係性が、この第6話でついに回想という形で明かされます。正反対に見える2人が、どのような出会いを経てルームシェアに至ったのか。この“友情の起点”を描くことで、千石という父親像がまた一段と立体的になったと感じました。
気になった・もう少し欲しかった部分
千石の心の動きが少し駆け足に感じた
千石が怒鳴ってしまい、その後すぐにツーリングに出るという展開はドラマチックではありますが、彼の“覚悟”や“決心”が視聴者にとってもう少し噛み砕かれていれば、感情移入がさらに深まったと思います。
特に、山中で立ち往生してからの夜の時間の描写にもう少し余白があると、千石の孤独や反省、そして愛梨への思いがより伝わったのではないでしょうか。
愛梨と真希(母)との距離感がもう少し見たかった
愛梨が母・真希に会えない寂しさからワガママを言うという設定は十分反応を呼びますが、母親側の事情やその影響がまだもう少し掘り下げられると、愛梨の言動の背景がもっと理解できたと思います。
感想まとめ
この第6話は、父親・千石の“弱さ”と“責任感”、そして男2人(千石と晴海)の友情の原点を描いた回でした。父として、男として、逃げたくなる瞬間があっても、それをどう立て直すかが問われていました。
また、「仲間=家族」「家族=仲間」という言葉がこのドラマでますますリアルに感じられました。千石と晴海の関係性が描かれたことで、単なる親子モノではなく、“二人の男が子どもたちを守る”という構図の厚みが増しました。
今後への期待と考察
今後注目したいのは、千石が愛梨にどう向き合い直すか。そして、晴海との関係から得た“父親としての覚悟”を、千石がどう子育てや仕事に反映していくか。
さらに、母・真希がハワイにいるという事情がどんな形で物語に影響を与えていくのか、愛梨が母親不在という中でどのように成長していくのかにも期待が高まります。
このドラマは、ただ夕飯を囲む温かいホームドラマではなく、“父親という役割”“家族というかたち”を問い直す物語だと思います。第6話は、その問いがひとつの転機を迎えた回だったと言えるでしょう。
(あいちゃん)

