自分主導の記事を追い求めて
第5話では、日向子(奥山葵)が「頼まれ仕事」ではなく、自ら主導したいという衝動を抱える姿がまず印象的でした。インパクトあるネタを探しながらもアイデアが出ず、途方に暮れる日向子。そこに、出演予定だった舞台を急遽降板した俳優・末永孝介(岩戸秀年)のニュースが飛び込んできて、彼が抱える“不祥事疑惑”に目をつけるところから動き出します。
聞き込み・潜入・暴露へ――記者のリアルライン
日向子は末永が通っていた美容室に客のふりをして潜入し、聞き込みを試みるも辛辣な言葉を浴び追い返されてしまいます。さらに居酒屋へ移動して裏情報を探る中で、末永の降板に関わる意外な因子を知る展開へ。取材の“当たり前”が通用しない現場で、記者としての覚悟、倫理、そして取材対象との距離感が問われる流れになっていました。
良かったこと
記者としての成長課題がリアルに描かれていた
日向子の「記事を自分で作りたい」という願いが単なる野心ではなく、仕事として、記者としての責任として描かれていた点が良かったです。ネタが思いつかず苦しむ姿もリアルで共感を呼びましたし、そこから「舞台俳優の降板」という裏ネタに気づき、動き出すところが物語としてスムーズに機能していました。
「舞台降板=何かある」という構図の引き方が巧み
出演予定の舞台を降板したという事実だけでも“怪しい”ですが、その背後に“パワハラ・セクハラの疑惑”というキーワードを入れることで、話の重みが一気に増していました。読者・視聴者として「何があったんだ?」と問いたくなる構図になっており、取材ドラマとしての引きも強かったと思います。
気になった・もう少し欲しかった部分
取材のプロセスが駆け足に感じた
美容室への潜入、居酒屋での聞き込み、意外な事実の発見という流れは面白かったのですが、もう少し取材の過程や抵抗・失敗の描写があっても良かったと感じました。例えば、美容師からの言葉の重みや、居酒屋での相手の言葉を得るまでの心理的な揺れなどがもう少し深ければ、取材ドラマとしての“臨場感”がさらに増していたと思います。
末永の立ち位置・背景がもう少し掘れていたら…
末永孝介という俳優の表向きの“舞台降板”という事実に対して、なぜ降板したのか・彼自身が抱えていた問題は何かという背景が、まだ断片的にしか提示されていません。視点が日向子視点であるため仕方ない部分もありますが、もう少し俳優・末永の“人間ドラマ”側が見えてくると、取材対象としての魅力と同時に“記事にする意義”もより見えてきたと思いました。
感想まとめ
第5話は、“取材をする側”“取材される側”“読者(視聴者)”という三者がそれぞれ揺らぎを抱えながら交錯する回でした。日向子が「自分で記事を仕掛けたい」という意志を持つことで、ただ与えられた仕事をこなす日常から抜け出し始め、舞台俳優の降板という“兆候”を見つけて動き出したことが、物語に転換をもたらしました。
また、取材対象としてだけでなく“人”としての末永が持つ秘密に触れることで、記事という形にすることの責任や覚悟も垣間見え、簡単なスクープではない覚悟の重みを感じさせました。
今後への期待と考察
次回以降、私が注目したいのは以下の点です:
– 日向子が末永の真実をどこまで掘るか。彼の“舞台降板”の背景が何なのか、記事として形になるのか。
– 取材を通じて日向子自身が記者としてどのように成長し、何を選ぶのか。記事のためにどこまで踏み込むのか、倫理の境界線はどこか。
– 「週刊千石」という編集部の仕組み・プレッシャー・旬のネタを追う現場のリアルが、今後どう描かれていくか。
– また取材対象だけでなく、取材者・編集部員の日常・葛藤・成長もさらに深めてほしい。
この第5話は、“動き出す記事”と“揺れ動く記者”を重ねて描いた、非常に重要な回だったと感じました。次回も楽しみです。
(あいちゃん)

