華やかな舞台の裏側で起きた悲劇
今話でまず衝撃を覚えたのは、“デビュー直前”という華やかなステージを控えた女性アイドルグループ Re Rise のメンバー・北原萌歌（山本奈津美）が、ブルーシートと重りを付けて水中に沈められた状態で発見されたという始まりです。
この設定ひとつで、「単なるアイドルドラマ」ではなく、「若者の夢とその裏にある歪み」「権力・保身・隠蔽」が交錯する犯罪ドラマへと一気に舞台がシフトしました。
また、刑事・細野由起子（山口紗弥加）と、彼女が“かつて補導した”という萌歌の関係が明らかになったことで、「被害者と加害者／刑事と補導歴のある若者」という過去の因縁と現在の事件が重なって描かれていて、物語に深みが出ていました。
良かったこと
人物背景と事件が繋がる構成の力強さ
萌歌の「補導歴がある」「オーディションでのライバル関係があった」「死体に重りが付いていた」「倉庫街・防犯カメラ映像」という複数の要素が連動し、事件の証拠＝背景＝関係性という三方向から捜査が展開されていたのが良かったです。
特に、重りが倉庫街で使われていたものと一致したという証拠が導入されたことで、「偶然ではない」「事件性が高い」と視聴者側で納得が進む流れとなっていました。
また、細野が“ただの刑事”ではなく、萌歌を見守ってきた“過去を持つ人”だという点も、キャラクターに厚みを与えていました。
若者・アイドル・夢という要素のリアルさ
アイドルグループという“きらびやかな世界”において、未成年飲酒・逆恨み・保身という暗部が露わになるあたりが、「夢を追う若者＝美しく輝いているだけではない」というリアルな視点をドラマに持ち込んでいたと思います。
その中で、刑事たちが“夢”に憧れながらも“現実”と向き合う姿が描かれ、視聴者として「どちら側にも立ち得る」という感覚を抱かせてくれました。
気になった・もう少し欲しかった部分
水上警察たる“水”の活かし方が控えめ
シリーズタイトルが「水上警察」である以上、“海・河川・船・水辺”ならではの捜査・アクション・演出が期待されますが、今回の回では事件の舞台・手がかりこそ水（遺体発見・重り・倉庫街近く）を使っていたものの、“水上警察ならでは”という強い特色が少し薄かった印象があります。
もう少し、水上・船舶・警備艇などの描写が多ければ、ドラマとしての引き出しがさらに増したのではないでしょうか。
捜査の進展がやや速すぎて余韻が薄れた場面も
重りの一致、防犯カメラ、逆恨み、補導歴という伏線が次々に提示され、「あ、真相はこうか」という流れが早く来たため、“捜査の迷い”“事件解明までのじわじわした過程”が若干省略された感じがありました。視聴者として「もう少し悩ませて欲しい」「もう少し捜査のドキドキを味わいたい」と思う瞬間もありました。
感想まとめ
第5話は、アイドルの死を起点に「夢」「過去」「権力」「保身」「刑事の過去」という複数のテーマが一気に交錯する密度の高い回でした。刑事・細野由起子の感情の揺れ、高木・碇拓真（佐藤隆太）ら捜査チームの信念、被害者側の事情、そしてアイドルグループ内部の人間模様――どれもが「誰が正しくて、誰が間違っているか／被害者か加害者か」という単純な図式では語れない重みを帯びていて、「ただの解決劇」で終わらせない意志を感じました。
特に、未成年飲酒など若者の“軽いノリ”が大きな命の危機へと繋がってしまう構図には、痛いほどのリアルがありました。夢を追うのもいいけれど、その裏にある責任・自分以外の誰かへの影響もちゃんと見なければならない――そんなメッセージを感じました。
今後への期待と考察
次回以降、以下の点に注目したいです：
– 由起子が抱える“補導した萌歌”という過去が、捜査・事件にどう影響を及ぼすのか？
– 倉庫街・防犯カメラ・重りという証拠は、誰がどんな目的で仕組んだのか？真犯人あるいは黒幕の輪郭が徐々に見えてきそうです。
– 若者側（アイドルグループ）の「夢を追うがゆえの危うさ」や「保身に走る姿勢」が、どれほど捜査チームを突き動かすのか？
– そして“水上警察”としての舞台設定が、今後どんな形で活きてくるのか？水辺・船上・海洋という場所が持つ不安定さや逃げ場のなさが、捜査上のギミックになることも期待しています。
この第5話は、物語を次のフェーズへと大きく動かす重要な回だったと感じました。次回もまた、ただ“事件解決”を描くだけでなく、“事件を生んだ背景”“事件に巻き込まれた人々の人生”がしっかり描かれていくことを期待しています。
（あいちゃん）
