初回15分拡大、1秒たりとも無駄がなかった。
草なぎ剛さん演じる鳥飼樹の涙が、言葉よりも雄弁だった。
派手な演出も大きな事件もないのに、胸の奥がじんわりと痛くなる。
“人の死”を描きながら、“生きる理由”を教えてくれる――そんなドラマだった。
「Heaven’s messenger」――遺品整理人という“命の仕事”
鳥飼樹(草なぎ剛さん)は、遺品整理会社「Heaven’s messenger」で働く遺品整理人。
5年前に妻を亡くし、小学1年の息子・陸(永瀬矢紘くん)を男手ひとつで育てている。
彼の口ぐせ「大丈夫、大丈夫」は、亡き妻の言葉の受け継ぎ。
レシピノートを見ながら料理を作る姿には、彼なりの“生き続ける理由”が見えた。
現場では、孤独死した母の部屋を片づける山崎(吉村界人さん)と向き合う。
「時間厳守」「捨てていい」と言われても、樹は手を止めない。
「この現場に居合わせた者として、故人様の思いを伝える責任がある」と。
そして山崎が10歳の時に別れた母の形見を見つけ、
「やっと会えましたね」と手渡す樹の表情に、涙がにじんだ。
“片づけ”ではなく、“つなぐ”仕事。
これがこのドラマの根幹だと、静かに教えてくれた。
過去の後悔が生んだ“今”――妻との最期の記憶
遺品整理人としての優しさの裏にあるのは、深い後悔。
5年前、商社マンだった樹は多忙の中、妻の異変を見過ごした。
病の症状で落とした書類、あのとき気づけなかった。
そして商談中、妻からの電話に出られなかったことが最後のやり取りとなる。
病院に駆けつけたときには、すでに息を引き取っていた――。
「昨日まで自分を待っていてくれた人が、明日も待ってくれているとは限りませんから。」
この一言に、すべての思いが凝縮されていた。
樹がこはる(風吹ジュンさん)の娘・真琴(中村ゆりさん)に
「お母さまを大切にしてあげてください」と伝えてしまうのも、
“自分にはもうできないこと”への祈りだったのだろう。
磯部(中村雅俊さん)の言葉が救いだった
妻を亡くした直後、遺品整理を依頼したのが磯部(中村雅俊さん)だった。
「慌てず、ゆっくりでいいんですよ。」
「泣いてしまった方がいい。涙ってのは、こういうときのためにあるのだから。」
その言葉が、樹を“生き返らせた”。
草なぎさんの号泣シーンは圧巻だった。
感情を爆発させるというより、心が壊れたような泣き方。
そのリアルさに、見ている側も一緒に呼吸を止めてしまう。
あの涙のあと、樹は“誰かの遺品を整理する”ことで、少しずつ前に進み始めたのだ。
草なぎ剛の演技が描く“静かな愛”
草なぎさんの演技は、本当に静かで、でも深い。
セリフよりも“間”で感情を伝える。
妻を思い出すシーン、息子を寝かしつけるときのトントン、
どれもが「愛の残り香」で、涙を誘う。
過去を抱えて生きる男の姿を、繊細に、そして真摯に描いていた。
“つよぽんの涙にもらい泣きした”というSNSの声が多かったのも納得だ。
物語はここから動き出す――真琴と御厨家の闇
ヒューマンドラマとしての温かさの裏で、
物語の後半では不穏な伏線が次々と張られていく。
真琴の嫁ぎ先・御厨ホールディングスでの社員自殺の隠蔽、
磯部の息子も同系列会社に勤めていたという過去。
“死”をきっかけに交錯する人間関係が、これからの物語を大きく動かしていく。
樹と真琴が出会った意味も、ここから明らかになっていきそうだ。
まとめ
第1話は、“死”のドラマではなく、“生”の物語だった。
亡き人を思い続けることは、悲しみではなく、希望の形。
草なぎ剛さんの繊細な演技、風吹ジュンさんの静かな強さ、
中村雅俊さんの包容力――どの瞬間も心に残る。
「昨日まで待っていてくれた人が、明日も待っていてくれるとは限らない」
この言葉を忘れずに、次回も見届けたい。
(ゆめのん)