最初の数分で、もう胸がざわついた。
草なぎ剛さんの目の奥にある優しさと孤独が、セリフより先に伝わってくる。
中村ゆりさん演じる御厨真琴の儚さも相まって、映像全体がまるで静かな呼吸みたい。
優しいのに、見ていると苦しくなる。
“もう二度と会えないあなたに”というタイトルが、1話にしてもう刺さりすぎた。
鳥飼樹(草なぎ剛さん)、遺品の向こうに見える生きた人の痛み
遺品整理という仕事は、ものを片づけるだけじゃなく、残された想いに触れること。
樹(草なぎ剛さん)は、遺品のひとつひとつに丁寧に手を伸ばす。
その所作が、優しさというより祈りに近い。
息子を男手ひとつで育てながら、人の「終わり」に寄り添う姿は、穏やかなのに芯が強い。
草なぎさんの静かな芝居が、何も言わなくても人生の重さを見せてくれる。
“片づける”という言葉が、ここでは“癒す”に変わっていた。
御厨真琴(中村ゆりさん)の微笑み、その裏に隠れた空洞
真琴(中村ゆりさん)は、華やかなパーティーの中で微笑みながらも、どこか現実にいない。
夫・利人(要潤さん)に「うちの天才ですから」と言われても、その笑顔が痛いほど硬い。
成功しても愛されていない、そんな矛盾をまっすぐ演じる中村さんが美しい。
絵本作家としての繊細な感性が、現実の不自由さに押しつぶされそうで、見ているだけで息が詰まる。
心が壊れる音が聞こえそうな沈黙が、何より雄弁だった。
偶然の出会いが運命に変わる瞬間
真琴(中村ゆりさん)が実家に戻り、そこで樹(草なぎ剛さん)と出会うシーン。
「誰、あなた?」という一言に、張り詰めた緊張と運命の匂いが重なる。
ベッドに倒れ込む一瞬の間に、二人の世界が交わる。
ドラマ的な偶然なのに、不思議と自然に感じた。
どちらも“居場所を失った人”だからこそ、出会いが奇跡のように見える。
派手な演出なしで、目線と息遣いだけで物語が動くのがすごい。
御厨家の闇、愛のふりをした支配
利人(要潤さん)は完璧な夫に見えるけれど、笑顔の裏が冷たい。
「支える」と言いながら、真琴(中村ゆりさん)の世界を支配しているように見える。
御厨家という大きな看板の中で、真琴の自由が少しずつ削がれていく。
光の多いリビングほど孤独が強調される演出が切ない。
華やかさの中に潜む閉じ込められた心。
そのコントラストが、ドラマ全体を美しく苦くしている。
森山(国仲涼子さん)とのシーン、女性の静かな連帯
真琴(中村ゆりさん)と編集者の森山(国仲涼子さん)が並ぶ場面、ただの仕事の会話じゃない。
二人の目の奥に、それぞれの戦いが見える。
完璧に見える女性たちが、実は同じように孤独と不安を抱えている。
SNSでも「美の競演」って言われてたけど、それ以上に“生き方の競演”だった。
国仲さんの落ち着いた声が、真琴の壊れそうな心を少しだけ支えてた気がする。
あの静かな時間が、嵐の前の静けさに見えて怖い。
まとめ
第1話は、死や喪失を描いているのに、どこか優しくてあたたかい。
草なぎ剛さんの穏やかなまなざし、中村ゆりさんの儚い強さ。
誰かを失った経験がある人なら、きっと心の奥が震える。
“もう二度と会えない”という言葉が、悲しみだけでなく希望にも聞こえる不思議。
次に樹と真琴が会うとき、どんな感情が生まれるのか。
静かな音で、心を揺らすドラマだった。
(みかんてぃ)